最新記事

人権問題

世界第2位の「強制労働製品輸入大国」──今こそ「ノー」と言うべき日本

A CALL TO ACTION

2022年5月26日(木)15時20分
アイリーン・リー、アナスヤ・シャム
ウイグル

中国政府の少数民族弾圧に対して、主要国は取り組みを強化する構えだ(新疆の綿花農場で作業する男性) AP/AFLO

<新彊ウイグル自治区では過去5年で100万人が拉致・強制労働させられている。中国の人権侵害に厳しい目が向けられるなか、経済制裁に加わっていないのはG7では日本だけ。「現代の奴隷制」になぜ日本政府は目をつぶるのか?>

世界のサプライチェーンから強制労働を排除する──G7は昨年10月の貿易相会合で採択した共同声明で、そう宣言した。世界で最も経済力のある7カ国は「ルールに基づいた多角的貿易体制において、強制労働の余地はない」と認めている。

強制労働を非難しただけではない。国際的サプライチェーンにおける強制労働の防止・確認・撲滅には、貿易政策が重要な役割を果たすとの認識も示している。

だが、G7の一角である日本は、こうした約束をいまだにはっきりとした行動に移していない。

強制労働に対する国際的取り組みを強化するというG7の声明は、中国政府がウイグル人ら少数民族への弾圧を続けるなかで出された。

中国の新疆ウイグル自治区では2017年以降、およそ100万人が拉致・拘束され、強制労働に従事していると指摘される。なかでも、少なくとも57万人の少数民族出身者が常時の監視の下、非人道的な環境で綿花の収穫作業を強制されてきた。

問題の大きさを受けて、アメリカやカナダ、ベルギー、オランダ、イギリス、フランスが中国による弾圧をジェノサイド(集団虐殺)や、生命と尊厳への最大の攻撃である「人道に対する罪」に認定している。

さらにアメリカでは昨年12月、ウイグル人の強制労働問題を焦点とする最も意欲的な法律の1つ、ウイグル強制労働防止法が成立した。同法は新疆が原産地の製品、または特定の企業・団体が新疆で生産した製品は全て強制労働の産物と見なし、アメリカへの輸入が自動的に禁じられることになっている。

ところが、日本は他国に手本を示すどころか、驚くほど不十分な行動のせいで眉をひそめられている。

G7各国のうち、中国の人権侵害に対する経済制裁に加わっていないのは日本だけだ。何もしない日本の態度は、サプライチェーンにおける強制労働への取り組みというコミットメントの本気度をめぐって、大きな疑問を招いている。

いい例が、今年2月1日に衆議院が賛成多数で採択した「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」だ。ウイグル人弾圧の全容を把握するために情報収集を行うべきだと指摘するにとどまり、強制労働問題を組織的かつ大規模な弾圧と捉えることなく、「深刻な人権状況」とぼかしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

ゼレンスキー氏が19日にトルコ訪問、ロシアとの交渉

ビジネス

日産、九州工場で24日から再び減産計画 ネクスペリ

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で一時9カ月半ぶり高値、高市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中