最新記事

フィリピン

フィリピン新大統領マルコス、「無資格だった」と最高裁に申立書

A Taxing Problem

2022年5月23日(月)15時10分
セバスチャン・ストランジオ
フェルディナンド・マルコス

かつての独裁者の息子マルコスは大統領選の得票では圧勝したが ELOISA LOPEZーREUTERS

<「民意でも悪事を覆い隠すことはできない」父マルコス時代の被害者や政敵が、立候補資格がなかったと最高裁に申し立てたが......>

フィリピン大統領選でフェルディナンド・マルコスが圧勝したのは5月9日。

それから1週間余りが過ぎた16日、人権活動家らのグループが最高裁にマルコスの当選無効を申し立てた。

申し立てによると、マルコスは脱税で有罪判決を受けているため、そもそも立候補資格がないのに、それを申告せずに出馬したという。グループは最高裁に対し、マルコスに議会で大統領就任宣言をさせないよう求めている。

選挙管理委員会はマルコスの立候補資格取り消しを求める請願を既に8件却下しており、争いの場が司法の最高機関に移った格好だ。

70ページに及ぶ申立書は「選挙は単なる票のゲームではない」という主張から始まる。「投票で示された民意でも、無資格という悪事を覆い隠すことはできない。法の維持と執行は常に何ものにも優先する」と申立書にはある。

マルコスの父は、かつて21年間にわたり独裁体制を敷いたフェルディナンド・マルコスだ。

申立人の代表は元最高裁広報官で弁護士のテッド・テ。ほかにもグループには、父マルコス時代の弾圧の被害者や政敵などが名を連ねる。

1972年9月から14年間続いた戒厳令の下、父マルコスは数千人の殺害や投獄、拷問を主導し、国庫から膨大な資産を奪い不正に蓄財した。

だが1986年に軍が後ろ盾となった反政府デモで大統領職を追われ、その3年後、家族で亡命していたハワイで死去した。

国を二分する政治分断に

その後、息子マルコスはフィリピンに帰国。北イロコス州の副知事と知事を務めた1982~85年に所得税を納めず、確定申告もしなかったとして、1995年に有罪判決を受けた。

今回の最高裁への申立書は、マルコスが立候補前に犯罪歴がないと届け出たのは虚偽であり、法に従えば彼は永久に公職に就くことはできないとしている。

「有権者の声だけで誰が被選挙権を持つか決まるのであれば、選挙法はないに等しい」と申立書は指摘する。

その上でマルコスに代わり、選挙の次点であり「適格者の中で最多の票を得た」ロブレド副大統領が大統領に就くべきだという。この主張が認められれば、選挙結果は完全に覆る(暫定得票ではマルコスが約3110万票、ロブレドが約1480万票)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アンソロピック、AI軍事利用の制限緩和しない意向=

ワールド

米国務省、ロシア攻撃で米の利益損なわないよう警告 

ビジネス

ワーナー、パラマウントと交渉へ 1株31ドルの新提

ビジネス

FRB当局者2人、当面の金利据え置き示唆 現行策「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中