最新記事

ウクライナ戦争

ロシア軍新司令官「シリアの虐殺者」は何者か 経歴、戦歴、東部戦線の見通し

Brutal New Commander

2022年4月18日(月)16時25分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)、エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)
アレクサンドル・ドボルニコフ

残虐な戦術で知られるドボルニコフを抜擢したプーチンの狙いはどこに TASS/AFLO

<シリアでは特殊部隊とヒズボラと傭兵を連携させ、学校や病院をほぼ毎日攻撃したアレクサンドル・ドボルニコフ。今後、ウクライナ東部ドンバス地方の戦闘は激烈なものになるとみられている>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ東部での大攻勢に備えて、兵站(へいたん)と指揮系統を立て直すためアレクサンドル・ドボルニコフを作戦全体を統括する司令官に据えた──それがアメリカと欧州各国の高官の見立てだ。

シリアへのロシアの軍事介入を指揮したドボルニコフは残虐な戦術で知られ、「シリアの虐殺者」の異名を取る。

ウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺からの撤退とドボルニコフの司令官任命。この2つの動きで、ロシアは侵攻作戦の初期の失敗を暗黙のうちに認めたことになる。

今後東部のドンバス地方で繰り広げられる戦闘はこれまでの戦闘とは比べものにならないほど激烈なものになると、ウクライナと西側の高官は警告する。

「ドンバスにおける戦闘は第2次大戦を彷彿させるような大規模な戦いになるだろう」

ウクライナのドミトロ・クレバ外相は4月上旬、NATO外相の会合で追加支援を訴えた後にそう述べた。

ロシア軍は北部ではウクライナ軍の激しい抵抗に遭いキーウ制圧に失敗したものの、ドボルニコフが指揮した南部では多少なりとも戦果が上がった。

それがロシア南部軍管区司令官のドボルニコフが侵攻作戦の統括を一任された理由の1つだと、米国防総省の高官は侵攻から1カ月半後の状況を見て匿名で指摘した。

米海軍分析センターのロシア軍の専門家、マイケル・コフマンも同意見だ。「ドボルニコフが率いた部隊の戦績はまだましだった」

侵攻作戦の第1段階で、ロシア軍はクリミア、ドンバス、そして北部と3方面から攻撃を開始したが、3つの作戦を統括する指揮系統はほとんど機能していなかった。

全体に目配りする戦域司令官はどこにいるのかと西側の政府関係者は必死に探したが、実戦部隊は主にモスクワからの司令で動いているようだったと、欧州の高官は匿名を条件に明かした。

「戦場で統括指揮に当たる司令官を任命した目的は明らかだ。より連携の取れた作戦行動を遂行するためだろう」と、この高官は言う。

「ただ、それが奏功するかどうかは、お手並み拝見というところだ。率直に言って、ロシア兵はその手の戦闘の訓練を受けていないし、このやり方はロシア軍のドグマ(教義)とも合わない」

シリアで実績を上げる

ドボルニコフはロシア極東のウスリースクで1961年に生まれた。10代で地元の軍学校を卒業し、その後ソ連時代の名だたる士官学校の1つ、モスクワのフルンゼ陸軍士官学校に入学。

初めて実戦を経験したのは、1999年に始まった第2次チェチェン紛争で自動化狙撃連隊を指揮したときだ。このとき彼はチェチェン共和国の首都グロズヌイが灰燼に帰すのを目の当たりにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UAE、対イラン軍事行動で領空使用許可せず 中立性

ワールド

米・ロ・ウの三者協議、軍事・政治問題巡り議論=ゼレ

ビジネス

USAレアアース株、一時26%上昇 米政府の16億

ワールド

イスラエル軍、ガザ最後の人質の遺体を収容
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 7
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 10
    外国人が増えて治安は悪化したのか
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中