最新記事

ウクライナ情勢

「ゴールポスト」動かしだしたロシア 行き詰まるウクライナ侵攻

2022年3月29日(火)11時11分

両軍は定期的に敵側の装備の損失数を発表しているが、自国側の損失は確認していない。

進軍を阻止されたロシアは、ロケット弾や迫撃砲による都市部への攻撃に出ている。

ウクライナ東部での勝利も厳しく

ロンドンのシンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)の地上戦専門家、ニック・レイノルズ氏は「現段階では進撃が止まっているか、せいぜい非常にゆっくりとしか進んでいない」と分析。「当初の戦略は今や完全に達成不可能になった。当初の戦略はウクライナ政府の排除、もしくは侵攻するだけで崩壊の原因を作ることだった。それが実現しなかったのは明白だ。正反対に近いことが起きている」と述べた。

ロシアは東部からウクライナ軍を追い出すという、縮小後の目標を達成するのにさえまだ努力が必要だ。ドンバス地域を構成する2州のうち、ルガンスク州はロシアの支援を受けた軍が93%制圧したが、ドネツク州は54%の制圧にとどまっているとウクライナ国防省は説明している。

一方、ウクライナは日増しに自信を深めているようだ。Oleksandr Gruzevich陸軍幕僚副長は25日、ロシア軍がキエフを制圧するには現状の3倍から5倍の部隊が必要だと指摘。ロシア軍は併合したクリミア半島とドンバスを南岸沿いに結ぶ「陸の回廊」を確立しようと試みているが、阻止されていると述べた。

米軍元司令官のホッジス氏は、ロシアが化学兵器や核兵器に手を出すのではないか、との恐怖に西側が打ち勝ち、ウクライナへの支援をさらに強化できるかが今後の焦点だと強調する。ホッジス氏によると、化学・核兵器の使用はロシアにとって何ら戦術的メリットがない。

同氏は、長距離ロケット弾、迫撃砲、ドローンといった兵器の供与拡大と併せ、諜報面でも西側が支援することにより、ウクライナは防戦から攻勢に転じることが可能だと指摘。「われわれはウクライナに大量の支援を行っておらず、小出しにしかしていない。負けてほしくはないが、積極的に勝たせようともしていない、といった感じがする」と語った。

(Mark Trevelyan記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ憲法裁、首相の職務停止命じる 失職巡る裁判中

ビジネス

仏ルノー、上期112億ドルの特損計上へ 日産株巡り

ワールド

マスク氏企業への補助金削減、DOGEが検討すべき=

ワールド

インド製造業PMI、6月は14カ月ぶり高水準 輸出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中