最新記事
健康

「ミニ肝臓」の技術が開く「移植を待たない」未来

Lifeline for Sick Livers

2026年3月30日(月)16時00分
イアン・ランドル (科学担当)
血液凝固の調整から細菌の除去まで肝臓は約500もの重要な働きを担っている MAGIC MINE/SHUTTERSTOCK

血液凝固の調整から細菌の除去まで肝臓は約500もの重要な働きを担っている MAGIC MINE/SHUTTERSTOCK

<病んだ臓器は体内に残したままで新しい細胞を送り込む斬新な手法が開発された>


▼目次
8週間にわたり機能維持

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、機能不全に陥った肝臓の働きを補助・代替するため、注射で体内に「ミニ肝臓」を作り出す技術を開発した。臨床で実用化されれば、移植を待つ慢性肝疾患の患者にとって朗報となる。ドナー臓器は依然として不足しているからだ。

「私たちはこれを『サテライト(衛星)肝臓』と考えている」と、研究を率いるサンゲータ・バティアMIT教授は述べた。「病気の臓器を体内に残したまま、これらの細胞を送り込めれば、肝機能の補強が期待できる」

マウスを用いた初期研究では、「ミニ肝臓」が本物の肝臓が作る酵素やタンパク質の多くを生成し、少なくとも2カ月は体内で機能することが確認された。肝臓は私たちの体内で最大の臓器の1つで、血液凝固の調整から薬物や細菌の除去まで約500もの重要な働きを担う。これらの機能の多くを受け持つのは、肝細胞と呼ばれる特殊な細胞だ。

バティアらの研究チームはこの10年ほど、移植手術に頼らずに肝細胞の機能を回復させる方法を模索してきた。その一つが、肝細胞をハイドロゲルと呼ばれる生体適合性の高い材料に埋め込む方法だ。ハイドロゲルは水分を多く含む柔らかい材料で、医療分野でも広く使われている。

だが、この方法にはハイドロゲル自体を手術で体内に埋め込まなければならないという問題があった。そこで研究チームは、肝細胞を注射で体内に送り込む方法を探った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中東情勢受けた需要抑制対策、中長期的に検討も=赤沢

ワールド

イスラエル、イランがミサイル発射と表明 イエメンか

ワールド

日本の格付け「A+」に据え置き、見通しは「安定的」

ワールド

ミャンマー国軍トップが退任、大統領候補に 後任は側
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中