最新記事

ウクライナ

ウクライナの宇宙産業がなければ、世界の多くの宇宙開発計画は存在しなかった

2022年3月10日(木)17時45分
松岡由希子

ウクライナの国営企業ユージュマシュは、安定した実績を誇ってきた YouTube

<ソビエト時代からウクライナの宇宙機関は、ロケット、人工衛星など安定した実績を誇り、世界の宇宙プロジェクトで重要な役割を担ってきた>

ロシアの侵攻によって被害が拡大するいっぽうのウクライナは、世界の宇宙開発において重要な役割を担ってきた。

ウクライナでは、1940年代半ばから1950年代初旬にかけて、宇宙ロケットや人工衛星などを開発するユージュノエ設計局やこれらを製造する国営企業ユージュマシュが設立され、1950年代以降、世界の宇宙開発において重要な役割を果たしてきた。1991年のソビエト連邦からの独立に伴って、1992年にはウクライナ国立宇宙機関(SSAU)を創設している。ウクライナの宇宙産業がなければ、多くの宇宙開発計画は存在しなかったといえるだろう。

国営企業「ユージュマシュ」の安定した実績

ユージュマスは打ち上げロケット「ゼニット」を製造したことで知られる。「ゼニット」は、1985年4月に初めて打ち上げられて以降、2017年12月までに計71回の打ち上げ実績を有する。

また、ソビエト連邦の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「R-36」やこれをベースに開発された衛星打ち上げロケット「ツィクロン」は、ユージュノエ設計局によって設計され、ユージュマシュによって製造された。

欧州宇宙機関(ESA)の低軌道用人工衛星打ち上げロケット「ヴェガ」の4段目エンジン「RD-843」も、ユージュノエ設計局によって設計され、ユージュマシュが製造したものだ。

ユージュマスでは、国際宇宙ステーション(ISS)へ補給物資を輸送する米国の無人補給船「シグナス」の打ち上げロケット「アンタレス」を米航空宇宙・防衛企業ノースロップ・グラマンと共同で開発し、その1段目タンクを製造している。

ウクライナ南東部ドニプロは、「ロケットの都市」

ユージュマスとユージュノエ設計局がともに本拠地とするウクライナ南東部ドニプロは、ソビエト時代、宇宙、原子力、軍需産業の中心として役割を果たした。現在も航空宇宙産業が盛んな「ロケットの都市」と呼ばれ、英宇宙開発スタートアップ企業スカイローラら、国外のスタートアップ企業もこの地に進出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1万件減の21.4万件 継

ワールド

EU・仏・独が米を非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ビジネス

中国人民銀、為替の安定と緩和的金融政策の維持を強調

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中