最新記事

核・ミサイル開発

北朝鮮ミサイル、発射直後に爆発か 首都近郊の謎の飛行場はICBM開発拠点?

2022年3月16日(水)18時35分
北朝鮮の国旗

韓国軍は、北朝鮮が16日に「未確認の飛翔体」を発射したが、発射直後に失敗したようだと明らかにした。写真は北朝鮮の国旗。クアラルンプールで2021年3月撮影(2022年 ロイター/Lim Huey Teng)

韓国軍は、北朝鮮が16日に「未確認の飛翔体」を発射したが、発射直後に失敗したようだと明らかにした。すでに米国と韓国は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の準備を進めている可能性があると警告していた。

NHKは16日午前、防衛省関係者の話として、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射された情報があると報じた。

韓国軍合同参謀本部によると、飛翔体は北朝鮮の首都平壌郊外にある平壌順安(スンアン)国際空港(順安飛行場)から発射。「発射直後に失敗したと推定される」と述べた。聯合ニュースは関係者の話として、飛翔体は空中で爆発したようだと伝えた。

北朝鮮は17年以降、ICBMや核兵器の実験を行っていないが、米国との非核化交渉が遅れているため、実験を再開する可能性があると表明している。

米インド太平洋軍は、北朝鮮の「弾道ミサイル発射」を非難するとともに、状況の不安定化につながる行動を自制するよう求めた。発射が失敗だったとされる点については言及しなかった。

謎の飛行場 ICBM開発拠点か

NKニュースによると、飛翔体の発射後、破片のようなものが平壌市内やその近郊に落下したというが、現時点で物的・人的被害の情報は確認されていない。

専門家からは、発射場所とされる順安飛行場がICBM関連技術の開発拠点になるとの見方が出ている。

2017年8月以降、順安飛行場を使った重要実験が増えている。米当局がICBM「火星17」の試射が実施されたとみる2月27日と3月5日の発射も同飛行場からだった。

米ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)の研究員ジェフリー・ルイス氏は「主要国際空港にミサイル開発支援施設を置くという構想は正気とは思えない」と述べ、順安飛行場を「非常に奇妙な空港」と評した。

この空港は、新型コロナウイルス禍で海外との往来が途絶える前から閑散としていて、中国便やロシア便がわずかに乗り入れるだけだった。

16年に空港に隣接する場所で弾道ミサイル向けとみられる施設の建設が始まった。この施設について、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は20年に、北朝鮮最大の車載移動式ICBMを実験目的の発射態勢にすることができるほどの高さがあると指摘している。

カーネギー国際平和財団のシニアフェロー、アンキット・パンダ氏は、首都に近いという地の利から順安飛行場が好まれていると指摘。金正恩氏が報道されることなく、発射を監視できると述べた。ただ、首都に近いだけに、今回のように失敗した場合の影響が懸念されるとも述べた。17年に火星12号が別の場所からの発射に失敗した際は、人口の多い地域に落下したという。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・『イカゲーム』の悪夢が世界をここまで虜にする理由
・地面に信号! 斜め上を行く韓国の「スマホゾンビ」対策が話題に
・韓国、保守に政権交代なら核兵器を配備する方針...米国は「関心なし」と専門家


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中