最新記事

韓国

「日本は100年の敵、中国は1000年の敵」、北京五輪を機に韓国の反中感情が拡大

2022年2月18日(金)18時30分
佐々木和義

ショートトラックスピードスケートで、韓国の反中意識が拡大した...... REUTERS/Evgenia Novozhenina

<開会式での韓服やスピードスケート・ショートトラックなど、北京五輪を機に韓国の反中感情が拡大している......>

北京五輪の開会式で朝鮮族の代表が韓服を着て登場し、韓国内で「中国が韓服を自国のものと主張している」と反発する声が高まった。韓国外交部は「韓服がわれわれの伝統衣服文化であることは全世界が認めている」と述べ、関係官庁と協力して、韓国文化を国際社会に紹介する活動を続けると明らかにした。

「五輪を機に反中感情は後戻りできない道を歩み始めた」

中国は国民を漢民族と55の少数民族に分けている。2022年2月4日に行われた北京五輪の開会式で漢民族と少数民族合わせて56民族の代表が中国国旗を掲げて登場した。朝鮮族の代表が韓国の伝統衣装である「チマ・チョゴリ」を着用していたことから、韓国内で「中国が韓国文化を侵奪している」との批判が高まった。

韓国政府を代表して開会式に出席した黄熙(ファン・ヒ)文化体育観光部長官は「両国関係に誤解が生じかねない」として、抗議する考えがないことを示し、専門家も中国で14番目に多い朝鮮族の代表が韓服以外の服装で登場することは想像し難いと指摘した。

「中国の公式行事で、韓服を着た人物の登場は初めてではなく、中国の少数民族である朝鮮族が韓服でアイデンティティーを表現した」と指摘したが、正月を祝う文言が問題になった。

開会式は陰暦の1月4日で、「ハッピー・チャイニーズ・ニュー・イヤー(HAPPY CHINESE NEW YEAR)」と書かれた英文がスクリーンに映し出された。韓国やベトナムなど複数の国が、陰暦の正月(lunar new year)を祝っているが、中国は「中国の正月」という表現を欧米などに発信しており、韓国が反発してきた。

韓国インターネットサイトに反中の書き込みが相次いだ。「五輪を機に反中感情は後戻りできない道を歩み始めた」という投稿に多数の「いいね」が付き、「行き過ぎた反中は警戒すべき」という投稿には「自分の国に帰れ」「韓中関係をこじらせているのは中国」などのコメントが返された。TikTokなど、中国製アプリを使わない「中国製アプリ不買運動」も起きている。

ショートトラック・スケートで反中が拡大

また、韓国が得意としているスピードスケート・ショートトラックで反中が拡大した。中国は2018年の平昌五輪で6個のメダルを獲得した韓国チームのキム・ソンテ監督を総監督として迎え入れ、2006年のトリノ五輪で3つの金メダルを獲得した後にロシア国籍を取得したヴィクトル・アン(韓国名、安賢洙・アン・ヒョンス)元韓国代表選手をコーチとして迎え入れた。また、平昌五輪で金メダルを獲得した林孝俊(イム・ヒョジュン)に中国国籍を与えるなど、ショートトラックに力を入れてきた。

2月5日に行われた混合リレーの予選で韓国選手が転倒すると、中国の解説者が手を叩いて喜んだ。準決勝で中国選手同士がタッチをしなかった疑惑が浮上、ビデオ判定で決勝に進出したが「ブルートゥースタッチ」という皮肉が飛び出した。

7日には男子1000メートルの準決勝1組で1位となった韓国の黄大憲(ファン・デホン)が失格、準決勝2組でも2位でゴールした李俊瑞(イ・ジュンソ)選手が失格となったが、いずれも中国選手が繰り上げで決勝戦に進出。これをうけて、中国贔屓と反発する声が相次いで、韓国の市民団体が駐韓中国大使館前で抗議デモを行う事態に発展した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ドイツ金融監督庁、JPモルガンに過去最大の罰金 5

ビジネス

英建設業PMI、10月は44.1 5年超ぶり低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 8
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中