最新記事

ミャンマー

クーデターから1年のミャンマー 緊張の中に静寂、早朝にゲリラデモも

2022年2月1日(火)21時09分
大塚智彦
抵抗のシンボルの3本指とアウン・サン・スー・チーのポスター

抵抗のシンボルの3本指を掲げるミャンマー市民 REUTERS

<あの日から1年、多くの商店が営業し往来には自動車も行き交っているが、この日常はフェイクだ>

軍によるクーデターから2月1日に1年を迎えたミャンマーは軍政に抵抗する民主勢力が呼びかけた「沈黙のストライキ」により、静かな1日を迎えた。

中心都市ヤンゴンの繁華街では約80%の商店が店を開けていたものの訪れる客はほとんどなく、店員が時間を持て余している姿があちらこちらで見られた、とヤンゴン在住のジャーナリストは伝えてきた。

反軍政の立場をとるメディア関係者への摘発、拷問、弾圧を逃れるため地下に潜伏しているこのジャーナリストは、1日午前10時過ぎから正午頃まで、ヤンゴンのダウンタウンを中心に治安当局を警戒しながら回ってみたという。

世界人権デーにちなみ12月10日に行われた「沈黙のストライキ」の際にはほとんど車両が走っていなかったが、クーデターから1年となった2月1日は約10倍の車両が路上を走っていたという。

軍の摘発を恐れて商店は開店

また、ヤンゴン市内のダウンタウンでは食堂などの商店が約80%店を開けていたという。これは12月10日の際に商店はほとんどがシャッターを下ろして閉店していたことと比べると大きな違いを感じたという。

反軍政の民主派は2月1日を前にSNSなどを通じて、「沈黙のストライキ」で同日午前10時から午後4時までの間、仕事を休み自宅などに留まることで社会活動をマヒさせることを訴えた。

これに対して軍や警察の治安当局は「ストライキ」に同調する市民に対しては厳しい姿勢で臨むことを表明。同調者に対しては「テロ法」などの容疑による逮捕もありうるとしていた。

こうした治安当局の強硬姿勢に恐れをなした商店主たちが1日午前から店を開けて「ストライキ」不参加の立場を示したものとみられているという。もっとも現地を見た前述のジャーナリストによると、開いている商店や食堂も訪れる客はほとんどなく「開店休業」の状態が続いていたという。

そうした店では店員が無表情で暇そうにしているか、店員同士や近所の市民とひそひそ話しをしていたという。

治安当局は市内を頻繁にパトロール

こうした状況のヤンゴン中心部では兵士や警察官を乗せた治安当局の車両が頻繁に市内をパトロールする様子が見られ、軍政が反軍政の市民の動きを極度に警戒している様子がみてとれたとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、10月は前月比・前年比とも伸び
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中