最新記事

北京冬季五輪

北京五輪には自前のスマホを持ち込むな、米加が選手に警告

Olympic Athletes Advised to Take Burner Phone to China As Required App Has Security Flaws

2022年1月19日(水)15時50分
ローラ・コーパー
北京五輪会場

北京冬季五輪のプレスセンター近くで、新型コロナウイルス検査のため並ぶ関係者 Fabrizio Bensch-REUTERS

<中国政府がダウンロードを義務付けているアプリはセキュリティ上の穴だらけだし、SNSも常に政府の監視下にある。西側の選手は冗談にも中国の悪口など言わないほうが身のためだ>

あるインターネット監視組織は、北京冬季五輪に参加する選手に対して中国政府がダウンロードを義務づけているアプリに関して、セキュリティー上の欠陥があると警告した。

カナダのトロント大学に本拠を置く研究組織「シチズン・ラボ」の報告書によれば、観客、報道陣、選手を含むすべてのイベント参加者は、「MY2022」というアプリをダウンロードする必要がある。音声チャット、ファイル転送、気象情報など、さまざまな用途を持つアプリだ。

また、中国国外からの訪問者は、入国時の健康チェックもアプリでできる。AP通信によれば、これは中国政府による新型コロナウイルス対策の一環だ。

しかし、1月18日に発表されたシチズン・ラボの報告書は、このアプリには「単純だが壊滅的なセキュリティ欠陥」があり、アプリ経由で送信される音声などのファイルの暗号化を「たやすく回避」されるという。また、パスポート情報や、病歴などアプリ経由で送信できる入国時の健康情報も、ハッキングに対して脆弱だと報告書は述べている。

USAトゥデイによれば、米国、カナダ、オランダなどのオリンピック委員会は選手に対し、2月4日に開幕する北京五輪に自分の携帯電話を持ち込まないよう警告している。

米国オリンピック・パラリンピック委員会(「Team USA」)は技術告示を出し、プリペイド式携帯電話やレンタルまたは使い捨てコンピューターの使用を推奨している。

技術告示には、「携帯電話のデータやアプリケーションは、コンピューターと同様に、悪意ある侵入や感染、データ漏えいのターゲットになる」と書かれている。

検閲用のワードリストも

AP通信によれば、米国オリンピック・パラリンピック委員会は選手に対して、「すべてのデバイス、通信や取引、オンライン活動が監視されることを想定」すべきと伝え、「中国で活動している間、データのセキュリティーやプライバシーは期待できない」と補足している。

シチズン・ラボの報告書によれば、このアプリには「政治的にデリケート」なコンテンツを報告できる機能があり、さらに、現時点では有効化されていないものの、検閲用のキーワードリストもあるという。

報告書は、こうしたキーワードの一つとして「新疆」を挙げている。中国当局が、イスラム教少数民族のウイグル人に対し、大量虐殺や強制的な不妊手術などの犯罪的行為を行っているとされる場所だ。

中国には、自国民を監視してきた長い歴史がある。30年以上にわたって中国を研究しているドイツのジャーナリスト、カイ・シュトリットマターは2021年1月、米国の公共ラジオネットワーク「NPR」に対し、中国の人々は「生涯、国家の監視の目を感じている」と語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中