最新記事

国際貢献

国際協力の業界は若者が少ないから──2つの世界をつなぐ伝道師:田才諒哉【世界に貢献する日本人】

2022年1月4日(火)17時50分
森田優介(本誌記者)

即戦力を求める業界、給料の安さなどで魅力を感じない若者

なぜ、それほどまで「伝える」ことに力を注ぐのか。明言はしなかったが、おそらくは田才の抱く危機感が関係している。

田才によれば、国際協力の業界には若者が少ない。大半の団体は若い新人を指導できるような余裕がなく、すぐにプロジェクトに入れる即戦力を求めている。

つまり、一度も途上国で働いたことがないような20代が職を得るのは難しい業界だ。未経験で現場に行きたいとなれば、ほとんどJICA海外協力隊の一択となりそうだ。

一方で若者の側も、社会起業への関心こそ高まっているが、給料の安さなどの課題があり、NGO・NPOにはあまり魅力を感じていないという。

「だからうまい仕組みを作って、若者を引き上げるようなサポートをしたい。それに僕は、ベテランたちと仕事をすることが多く、国際協力で長く活動してきた先輩たちを尊敬しているが、彼らと若い人たちが乖離されていると感じる。若い人とベテランが一緒に何かできれば、もっと面白いことができるんじゃないか」

国際協力NGOを支援するNGOである、JANICという団体がある。田才はそこで最年少理事も務めており、若い人がもっと国際協力の世界に入って来てくれれば、という思いが彼を突き動かしている。

途上国により大きなインパクトを与えるために、必要なことをする――。

もはや「現場」には固執しなくなったようだが、オフラインとオンラインを軽々と超え、ベテランと若者の2つの世界をつなぐ29歳の姿がそこにある。

Ryoya Tasai
田才諒哉
●国際協力サロン代表、ササカワ・アフリカ財団ジュニアプログラムオフィサー

20211123issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月23日号(11月16日発売)は「世界に貢献する日本人30」特集。本田圭佑、冨永愛、國井修、杉良太郎、白川優子、鮫島弘子......。よりよい世界の力になる日本人30人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中