最新記事

ウクライナ侵攻計画

アメリカとNATO緊張、クリミア併合の二の舞を警戒

Russia Plans to Make 'Aggressive Moves' to Destabilize Ukraine, U.S. Says

2021年12月2日(木)17時08分
アレックス・ルーハンデー
プーチン

「相手に挑発されない限り」軍事行動には出ないと言うプーチン Sputnik/Mikhail Metzel/Pool via REUTERS

<国境地帯に約10万人の軍部隊を集結させるロシアの動きは前回のウクライナ侵攻時に酷似していると指摘>

アントニー・ブリンケン米国務長官は12月1日、アメリカは「ロシアがウクライナに対する重大な攻撃的行動を計画している証拠があり、強い懸念を抱いている」とロシアを非難した。実際にそのような行動に出た場合、アメリカとNATOの同盟諸国は、「これまで控えてきた影響の大きいさまざまな経済措置」を取ると警告した。

経済措置(つまり経済制裁)はすぐにも実行される可能性がある。だが一方で、ブリンケンとNATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長が、ウクライナを守るために軍事行動に出ることはないとみられる。ウクライナはNATO加盟を希望しており、加盟候補だが、加盟国ではない。

ブリンケンはラトビアで開かれたNATO外相会議の場で、「(ロシアの)ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻を決めたかどうかは不明だ」と述べた上で、次のように語った。「分かっているのは、彼が(侵攻を)決断しさえすれば、すぐに実行できる態勢を整えていることだ。だから(ロシア側の)意図やタイミングが不確かであっても、我々としてはあらゆる不測の事態に備えると同時に、ロシアがバカな考えを捨てるよう仕向けなければならない」

クリミア併合時と酷似

最近の複数の報道によれば、ロシアはウクライナとの国境地帯に約10万人の軍部隊を集結させており、戦車などの重量機材も配備している。これらの動きは、ロシアが2014年にウクライナのクリミアを併合した時の動きによく似ているとブリンケンは指摘した。

今回の問題は、ロシアと西側諸国の緊張が高まるなかで浮上した。ロシアは12月1日、在ロシア米大使館の一部職員に対して1月末までに帰国するよう命令。アメリカがロシア人外交官27人のビザ延長を行わない決定を下したことへの「報復措置」だ。

ロシア政府はまた、ウクライナとの関係において、権利を侵害されているのが自分たちの方であるように見せかけ、ウクライナを「侵略者」に仕立て上げようとしている。ロシアは、ウクライナとNATOが自国の国境付近に軍部隊を集結させていると主張。プーチン大統領は1日、西側諸国が軍隊を「ロシア領土に近づけない」ことの保証を求めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比4.3%増 民間航空

ワールド

中国、フェンタニル対策検討 米との貿易交渉開始へ手

ワールド

米国務長官、独政党AfD「過激派」指定を非難 方針
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中