最新記事

中国

中国のテニス選手だけではない、セクハラ告発に関わって失踪した女性たち

Chinese Activists Who Supported #MeToo, Also Disappeared

2021年11月25日(木)19時00分
ローラ・コーパー
黄雪琴

ジャーナリストで活動家のソフィアこと黄雪琴も消息不明に South China Morning Post-YouTube

<セクハラ告発を支援した活動家らが消息不明に。「男尊女卑」から脱皮できない党指導部や有力者にとって、#MeTooの高まりは脅威だ>

中国の女子プロテニスプレーヤー、彭帥(ポン・シュアイ)が共産党最高指導部の元メンバーに性的関係を強要されたことを告発し、その後消息を絶った事件では、共産党の「彭帥は無事」アピールにもかかわらず、引き続き安否が懸念されている。だが、中国にはほかにも消息不明になった#MeToo(私も)運動の活動家がいる。

女性たちのセクハラ告発を支援したジャーナリストの黄雪琴(Huang Xuequin)と労働問題活動家の王建兵(Wang Jianbing)は、今年9月に当局に拘束され、連絡が取れなくなっている。

黄は2018年にアメリカ在住の中国人女性、羅茜茜(ルオ・シーシー)が北京航空宇宙大学在学中に教授に性行為を迫られたことをSNSで告発した際、羅の主張を裏付ける証言を集めるなど、支援に奔走した。羅の告発をきっかけに数十人の被害者が声を上げ、大学は調査を実施し、問題の教授を解雇した。

AP通信によれば、黄らの活動で広がった中国版#MeToo(「#我也是」)は一定の成果を挙げた。民法に初めてセクハラ罪の定義が盛り込まれたのもその一例だ。一方で、中国当局は女性たちの運動の高まりを警戒し、活動家の弾圧に乗り出した。

「外国勢力の手先」というレッテル

「当局は私たちの運動を非合法化し、公的な言論の場から私たちを排除しようとしている」と、女性問題の研究家で活動家の呂頻(Lu Pin)はAP通信に訴えた。「今の中国では、政治的に中立な発言さえ許されなくなっている」

黄と王の友人の1人が匿名を条件にAP通信に語った話によれば、黄と王は「国家政権転覆」の罪に問われることになると、警察が王の家族に通告したという。国家政権転覆罪は定義が曖昧で、民主派や人権派の活動家らに恣意的に適用されるケースが目につく。

以下はAP通信が伝えた詳細。

中国当局が#MeTooなどの女性運動を深刻な脅威と見ていることは、活動家に「外国勢力の手先」というレッテルを貼っていることから明らかだ。当局は、女性差別や人権侵害は中国の不安定化を狙う外国勢力のでっち上げにすぎないと強弁し、運動の広がりを必死で抑え込もうとしているのだ。

中国では今でも性差別に公然と異議申し立てをする女性は少数派で、#MeToo運動の活動家の多くはさほど有名ではなく、影響力も限られている。それでも当局はその存在に神経を尖らせている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干

ワールド

アングル:欧州最大のギャンブル市場イタリア、税収増

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中