最新記事

領有権

中国、南シナ海で横暴続々と フィリピンのEEZ内座礁船の撤去を要求 

2021年11月27日(土)21時42分
大塚智彦
南シナ海のフィリピン海軍の座礁船「シエラマドレ」

アユンギン礁にあるフィリピン海軍の座礁船「シエラマドレ」

<経済的に頼りつつも南シナ海の領有権では中国と対立するフィリピン。この関係に変化が訪れるのか──>

中国とフィリピンの間で領有権を巡る争いが続く南シナ海で、フィリピンが拠点として実効支配し海軍兵士が駐留している南沙諸島(スプラトリー諸島)の岩礁にある座礁船を中国側が撤去するように求めていることが明らかになった。

フィリピンの排他的経済水域(EEZ)にある同拠点を巡っては11月16日に食料などの物資を座礁船に補給するフィリピンの民間船舶が中国公船により進路妨害や放水銃による放水を受けるなどの妨害を受け、フィリピン政府が抗議するとともにマニラにある中国領事館に抗議の活動家や漁民が押し寄せるなど両国関係が緊張する事態となっていた。

中国外交部の趙立堅報道官は11月24日、南沙諸島のアユンギン礁(中国名・仁愛礁)にフィリピンが海軍艦艇を座礁させてそこに兵士が常駐し続けて「実効支配」の状況を作り出していることに不快感を示し、同座礁船の撤去を求めた。

中国公船が進路妨害と放水で「威嚇」

アユンギン礁は中国が南シナ海のほぼ全域を自国の海洋権益が及ぶ海域と一方的に主張している「九段線」に基づき領有権を主張している。

これに対し、フィリピンはEEZ内の岩礁アユンギン礁の浅瀬に1999年海軍の揚陸艦だった「シエラマドレ」を意図的に座礁。兵士を常駐させることで「領有権」を国際社会に主張し続けているのだ。

アユンギン礁の座礁船に常駐するフィリピン海軍兵士に定期的に食料などを補給する船舶がフィリピン本土との間を定期的に往復している。ところが11月16日にアユンギン礁に向かっていたフィリピンの民間船舶2隻が中国海警局の公船3隻に進路を妨害され、放水を受ける事案が発生した。

民間船舶は放水により一部が損傷したためこの時はアユンギン礁への補給を断念して本土に戻ったという。

こうした中国側の「威嚇妨害」に対してフィリピン政府は外交ルートを通じて中国側に抗議するとともにドゥテルテ大統領は22日に嫌悪感と重大な懸念を表明した。

しかし中国側は「自国の管轄圏で法を執行しただけである」としてその行動を正当化。これを受けてテオドロ・ロクシン外相は「中国はこの海域で自国の法を執行する権利はなく、今回の事態は違法行為である。中国によるこうした自制心の欠如は2国間関係を脅かすものである」と述べて中国を厳しく批判した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中