最新記事

中国

河野太郎に好意的な中国──なぜなら「河野談話」否定せず

2021年9月12日(日)19時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

実は慰安婦問題に関しては『父の謝罪碑を撤去します 慰安婦問題の原点「吉田清治」長男の独白』(産経新聞出版)などにあるように、証言者の信憑性そのものが崩れているが、アメリカ政府からの圧力があり、日本の歴代内閣も「河野談話」を継承せざるを得ないところに追い込まれてという現状がある。アメリカ政府に力を及ぼしたのは在米コーリアンたちだ。しかし日本はアメリカに言われると弱い。安倍政権でさえ、結局のところ屈した。

したがって河野太郎氏が「自民党政権から引き継がれてきた歴史認識を引き継ぐ」と言ったということは「河野談話」を継承すると言ったのに等しいことになってしまう。日本でも政治ジャーナリストの安積明子氏が9月11日<"河野談話"を踏襲した河野太郎は、「日本を前に進める」ことができるのか>と疑念を発した情報も中には見られる。しかし日本は得てして、この問題にあまり注目はしていない。

ところで北京日報の報道は、もともと新華社報道に基づいたものだったが、新華社報道の見出しには「慰安婦問題」という言葉がなく、おとなしいものだった。しかし北京日報が見出しに「慰安婦問題」と付け加えたものだから、中国での他のメディアも一斉に「慰安婦問題」を見出しに入れて転載を始めた。

したがって中国では「河野太郎出馬」=「河野談話継承」=「慰安婦問題承認」のようになっており、河野太郎なら中国に有利だろうというムードが醸し出されている。

日本にとっての影響

いま行われようとしているのは、あくまでも「自民党総裁選」であって、投票行動に国民の意思が反映されるものではないが、しかし立候補者は「国民の人気度」を気にしており、それが総裁選後の衆院選に影響していくのはまちがいないだろう。

中国が河野氏へのエールを送っているということは即ち、河野氏は中国にとって「都合がいい」ことになり、それは有形無形の影響を日本に及ぼす。

たとえば天安門事件後の対中封鎖に関しても、中国政府はすぐさま日本政府要人と経済界の要人にコンタクトを持ち、強烈な接近を図ってきた。

中国のシャープパワーには、益々磨きがかかっており、日本の大手メディアさえ、その範疇にある。

日本の政財界への水面下における働きかけは、われわれ国民には止めようがないが、しかし政府要人は投票行動のために「国民の声」を気にしている。

中国は盛んに、河野太郎は若者の間で絶大な人気を博しており、SNSのフォロワー数において群を抜いていると高く評価している。若者は「河野談話」の何たるかを知らない人が多いかもしれない。

中国に気に入られているということは、中国の思うままに動かせるということだ。

中国が言論弾圧をする一党独裁の国であることを忘れてはならない。

この事実が若者に届くよう、読者の方々のお力添えを願うばかりだ。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡のタンカー通航、徐々に始まっていると米

ワールド

EXCLUSIVE-イラン新最高指導者、米との緊張

ビジネス

独ZEW景気期待指数、3月は-0.5に急低下 中東

ビジネス

JPモルガン、英利下げ時期の予想を先送り 27年第
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中