最新記事

アフガニスタン

タリバンと米軍が「反テロ」で協力か──カブール空港テロと習近平のジレンマ

2021年8月28日(土)11時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
カブール空港のテロ現場

アフガニスタンのカブール空港を襲ったテロ(8月26日) REUTERS TV/REUTERS

中国はタリバンを支援する交換条件としてテロの撲滅を絶対条件とした。今般のテロでタリバン兵士28人が犠牲になっており、タリバンはアメリカと協力してテロ組織をつぶそうとしている。これは習近平に痛手か?

カブール空港テロでタリバン戦闘員28人が犠牲

8月26日、アフガニスタンのカブール空港でイスラム過激集団「ISIS(イスラム国)」による自爆テロが起き、85人が死亡したとロイター電が伝えた。それによれば

●襲撃により少なくとも72名のアフガニスタン人が死亡

●米軍は兵士13名が死亡、18名が負傷

●タリバンは少なくとも28人の戦闘員が死亡

●ISISの脅威にもかかわらず、避難は加速している

とのことだ。

注目されるのは犠牲者の中にタリバン戦闘員が28人もいるということである。

このたびの自爆テロに関して犯行声明を出したのは、ISISの関連組織の一つである「ISIS-K」で、「アメリカ軍の翻訳者や協力者」を狙ったと発表した。

ロイター電によれば、ISIS-Kは当初、パキスタンとの国境沿いの地域に限定されていたが、同国北部に第2の戦線を確立したとのこと。ニューヨーク州のウェストポイントにあるテロ対策センターによると、ISIS-Kにはアフガニスタン人に加え、他の過激派グループのパキスタン人やウズベクスタン人の過激派が含まれているという。

タリバンとは敵対する勢力だ。

タリバンがアメリカと和平合意に至ったことに反対している。

タリバンが米軍と協力して過激派ISISを打倒する

アメリカ中央軍の司令官を務めるフランク・マッケンジー将軍は、空港を標的としたロケット弾や車両爆弾の可能性を含め、ISISによるさらなる攻撃を警戒している」と述べ、「一部の情報はタリバンと共有している」とした上で、「タリバンによっていくつかのテロ攻撃が阻止された」と付け加えた。

つまり、タリバンはテロ集団と戦っているということだ。

何よりも驚くべきは、マッケンジー将軍が「米軍の司令官はタリバンの司令官と協力してさらなる攻撃を防いでいる」と語ったことである。

つまり、「米軍がタリバンと協力してテロ活動を防いでいる」というのだ。

中国共産党が管轄する中国の中央テレビ局CCTVも8月27日正午のニュースでカブール空港テロ事件に関する特別番組を組んだのだが、そこで中国国際問題研究院の研究員である崔洪建氏が「米軍とタリバンが協力して共にテロと戦う」という可能性を排除できないと解説していた。

そうなると、アメリカがここに来て、初めて「反テロ」に向けてタリバンと共闘するという、前代未聞の事態が現れるということになる。

習近平のメンツはつぶれてしまう?

万一にもタリバンとアメリカが組んだとすれば、これはとんでもない事態がやってくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「韓国のり大好き、コスメも使っている」 日

ワールド

高市首相が就任会見、米大統領に「日本の防衛力の充実

ビジネス

米GM、通年利益見通し引き上げ 関税の影響額予想を

ワールド

インタビュー:高市新政権、「なんちゃって連立」で変
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中