最新記事

コロナワクチン

妊娠中にワクチンを接種したら赤ちゃんが抗体をもって生まれてきた

Vaccinated Mother Gives Birth to Baby With COVID-19 Antibodies

2021年8月11日(水)15時20分
トーマス・キカ
ワクチン接種を受ける妊婦

母と子、一石二鳥の感染予防になった(写真はメキシコ) Daniel Becerril-REUTERS

<生まれてくる赤ちゃんをコロナ感染から守るには、母親がワクチンを接種するのが数少ない方法の一つ>

ミズーリ州セントルイスに住む女性が赤ん坊を出産すると、赤ん坊にうれしいサプライズがついてきた。新型コロナウイルスの抗体だ。これは、母親のケイトリン・ヒューバーが妊娠中にワクチン接種を受けたためにできたものだと医師たちは考えている。

どうやらワクチンは、母親と赤ん坊二人の感染予防策になるようだ。ヒューバーはほかの妊婦たちにも自分の体験を広めたいという思いから、ミズーリ州ワシントンにあるマーシー・クリニック・ウィメンズ・ヘルスと協力し、自身の体験談を伝えている。

「娘であるノラの姿、彼女の幸せで健康な姿を見てもらうことで、ワクチン接種の決断に必要な安心感を少しでも感じてもらえればうれしい」とヒューバーは話している。

マーシー・クリニックの産婦人科医グレゴリー・ポッツ博士は、「妊娠中の女性がワクチン接種を受けると、自分自身が守られるだけでなく、つくられた抗体が赤ん坊にも受け継がれることが示された」と説明する。「われわれは、臍帯血(さいたいけつ)と赤ん坊の両方に抗体を発見した。つまり、一石二鳥の効果ということだ。母親は守られ、少なくとも一時的には赤ん坊も守られる」

12歳以下に使用できるワクチンはまだない

ポッツが示唆しているように、抗体が新生児の体内にどれくらい存在し、新生児をいつまで守るのかは不明だ。ワクチンは今のところ、人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から身を守るための最も効果的で持続的な方法だ。しかし、これまでに緊急使用許可が出ているワクチンのなかには12歳以下に使用できるものはないため、妊婦がワクチン接種を受けることは、新生児を守るための数少ない方法の一つだ。

ミズーリ州では、ワクチン接種が停滞しており、デルタ株によるCOVID-19の感染急増に見舞われている州の一つだ。米疾病予防管理センター(CDC)によれば、ミズーリ州では8月第1週、2万人以上の新規感染者が確認されている。これは、人口10万人当たり約329人が新たに感染した計算になる。ミズーリ州は、フロリダ州やアラバマ州、ミシシッピ州、ルイジアナ州、アーカンソー州とともに、CDCのカテゴリーで人口当たり新規感染者が最も多い州に分類されている。

新型コロナウイルスの抗体を持つ赤ん坊を出産した母親はヒューバーだけではない。ケーブルテレビ局「ショウタイム」のドラマシリーズ「シェイムレス 俺たちに恥はない」で知られる女優のエミー・ロッサムは7月、妊娠中にワクチン接種を受けたおかげで、娘が抗体を持って生まれてきたことを明らかにした(娘は当時、生後2カ月だった)。

ロッサムは、インスタグラムに次のように書いている。「私は妊娠中にワクチン接種を受けた。私たちは健康で美しい女の子を授かっただけでなく、たった今わかったことだが、私たちの娘は抗体を持っている......無責任で愚かな態度を改め、ワクチン接種を受けてほしい」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で

ビジネス

日本製鉄、USスチール買収予定時期を変更 米司法省

ワールド

英外相、ウクライナ訪問 「必要な限り」支援継続を確
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中