最新記事

中国

中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本:建党100周年大会の構成と習近平演説を解剖

2021年7月3日(土)13時36分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

一人っ子政策で若者が激減し人口構成が危険な領域に入っている中、習近平がいかに若者党員を増やそうとしているかが見て取れる。ハイテクを進めていくためにも、大学生などの学生党員が求められており、習近平政権になってからは、党員構成として「学生党員」の統計を取るようになり、おおむね35~40%を継続している。

二、中山服と習近平の演説から見えてくるシグナル

中山服は特別ではない

なんだか日本のメディアでは盛んに習近平が 中山服を着ているので、「毛沢東を模倣した」とか「一人だけ権威付けを行っている」といった分析が見られるが、短絡的としか言いようがない。もっと言うならば、中国の政治を何も知らない者の分析とさえ断言することができる。

中山服は孫中山が考案したとされることからこの名が付いているが、これは毛沢東も蒋介石も着ていた服だ。新中国になってからは「人民服」とも呼ばれていた。

2012年12月に習近平が広州戦区を考察した時も、中山服を着ている。

そもそも1998年11月に訪日した江沢民が宮中晩餐会に招かれた時に着ていたのも中山服で、中国としては最もフォーマルな服をまとったという意識でしかなかっただろう。

習近平も2018年11月にスペインを国賓として訪問し国王と面会しているが、その時も最もフォーマルな中山服を着ている

現役最高指導者は常に一人だけ中山服

一歩進んで言うならば、江沢民政権以降の中国には「現役の最高指導者だけが中山服を着て、他の人は背広を着るというルール」がある。

まず、江沢民が国家主席だった時の写真をご覧に入れよう。

endo20210703094802.jpg
これは建国50周年記念(1999年)の時の天安門楼上における江沢民と他の指導者の写真である。

建国50周年記念 江沢民国家主席だけが中山服を着ている(bilibili動画サイト)

古いのでCCTVの映像は探し出せず、動画サイトbilibiliの動画からキャプチャーしたものである。江沢民(国家主席)だけが中山服を着ていて、他の指導者はみな背広であることが一目瞭然だ。

しかも深圳商報を見ればもっと鮮明に分かるが、江沢民は毛沢東が着ていた同じ灰色の中山服を着ているのが分かるだろう。

胡錦涛の時はどうだろうか。

映像が不鮮明だが、2009年の建国60周年記念の時に、やはり胡錦涛だけが中山服を着ている。

endo20210703094803.jpg
原典:2009年10月のCCTV映像からのキャプチャー

真ん中にいるのが胡錦涛で、胡錦涛だけが白いワイシャツが見えてないので、中山服を着ていることが見て取れる。念のため江沢民と胡錦涛だけの写真を貼り付ける。

endo20210703094804.jpg
同じくCCTV映像からのキャプチャー

2015年9月3日、抗日戦争勝利記念日において、習近平国家主席は中山服を着て、江沢民と胡錦涛は背広であるという写真もある。

endo20210703094805.jpg
原典:中国新聞網

江沢民や胡錦涛以外の、天安門楼上に並ぶ他の指導層もみな背広だ。写真が多くなりすぎるので省略する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UPS機が離陸後墜落、米ケンタッキー州 負傷者の情

ワールド

政策金利は「過度に制約的」、中銀は利下げ迫られる=

ビジネス

10月の米自動車販売は減少、EV補助金打ち切りで=

ワールド

ブリュッセル空港がドローン目撃で閉鎖、週末の空軍基
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中