最新記事

中国

コロナ張本人、「中国点火vsインド点火」の罪と罰

2021年5月7日(金)13時11分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

愛国主義に洗脳され、ナショナリズムに燃えている一部の若者からは「いいぞ、いいぞ!」という礼賛があったが、掲載から5時間ほどで、長安網は自ら、この画像を削除した。

しかし5月1日22:22になると、復旦大学の若手の講師(沈逸)が「何が悪いんだ、いいじゃないか」とウェイボーで発信し、それに対して同日23:58に中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」の胡錫進編集長が反論したことでネットはさらに炎上。胡錫進は「環球網」のウェイボーで「沈逸氏の意見には賛成しかねる。一般の中国人が書いたのなら特に問題はないが、官側機関のアカウントがこのような情報を発信するのは適切でない。人道主義の旗のもと、インドに同情し、道義的な姿勢でなければならない」という趣旨の批判を発信した。

すると中国のネットは賛否両論に分かれて炎上を続け、全世界の知るところとなったのである。

「中国点火vs.インド点火」が現れた背景

中国共産党機関紙系のメディアが批判し、中共中央政法委員会の新聞網である「長安網」がウェイボー情報を自ら削除したという事実から、以下のようなさまざまな事象が考えられる。

1.まず考えられるのは、この情報は中共中央が命じたものではなくて、長安網のウェイボー管理担当という、政府の情報発信としては末端の若いスタッフが衝動的に発信したものであろうことが考えられる。なぜなら、若くないとウェイボーを器用に扱えないし、一方では、その発信を中共中央情報機関のトップに当たる中国共産党機関紙「人民日報」姉妹版「環球時報」の編集長が叩いたからだ。

2.そこでネットが炎上したのを知って、「長安網ウェイボー」の上のランクに当たる「長安網」の(年長の)責任者が知り、事情を聴取して発信者に削除を命令したという流れだろう。

3.中共中央政法委員会という組織は中国国内の治安に携わる機関で、安全の名の下に、ありとあらゆる「弱い者いじめ」をしまくってきたところだ。一般庶民から最も嫌われている組織と言っても過言ではない。おまけに「インドのコロナ犠牲者」など、国内治安には関係ないテーマに口出ししたこと自体、お門(かど)違いだ。

4.ではなぜ、外交部(外務省)が担当するような領域に踏み込んでしまったのだろうか?ここからが重要で、中国ネット社会の病理が潜んでいると私は見る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中