最新記事

中国

コロナ張本人、「中国点火vsインド点火」の罪と罰

2021年5月7日(金)13時11分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

思うに、外交部の趙立堅報道官は、常に攻撃的で、品性のない言葉で相手国を罵倒することで有名だが、これが中国の狭隘(きょうあい)な若いナショナリストたちに受けている。たとえば4月26日、趙立堅がツイッターで、日本政府の東京電力福島第1原発処理水の海洋放出方針を揶揄(やゆ)する以下のような画像を投稿した。

endo20210507111602.jpg
外交部報道官・趙立堅がツイッターに投稿した、葛飾北斎のパロディー画

これは葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」のパロディー画で、防護服を着た人が船からバケツで緑色の液体(処理水)を流す様子が描かれている。背景の富士山を原発のような建物に置き換え、雲の一部を十字架に変えた「勉強が大好きな男の子」と名乗る者が描いた絵だ。趙立堅は処理水に関して「日本は間違った決定を撤回し謝罪すべきだ」と主張し、日本政府の「日本文化に対する侮辱だ」という抗議を拒絶した。そのことも含めて4月27日には中国のネットで趙立堅を絶賛するコメントが燃え上がり、若いナショナリストたちに高揚感を与えた。

5.そこでナショナリズム競争に駆られて、長安網ウェイボーの管理を担当している、おそらく若いスタッフが、自分も人気を博そうと試みたものと推測される。浅はかなナショナリズムの競争心だけでなく、そこにあるのは、ネット時代特有の「アクセス件数を誇る競争心」の危なさだ。

中国の新ナショナリストと傲りの罪と罰

現在のネット空間においては、誰もが発信者になることができ、自分の発信に対して何名くらいの人が反応してくれたかに対して強い関心を持つ傾向にある。

アクセスする人が多いと、自分の存在が認められたようで心地いい。

アクセス数が増えるのは、過激な愛国主義的発信をした時が多い。それも普通の過激さでは関心を呼ばず、時勢に乗った「常軌を逸した」過激さが「受ける」。

中国の愛国主義教育は1994年に江沢民が始めた。しかしその時代にはネットは発展しておらず、群集心理で動くとすれば、実空間における「デモ」くらいのものだった。

今は違う。中国の一人のネットユーザーが発信した短文やパロディー画が、全世界を駆け巡ることもある。

トランプ政権が生まれてからというもの、対中制裁が激しかったために、それに対する反抗心としてナショナリストの先鋭化の度合いが激しくなり、「中国共産党万歳!」「中華人民共和国万歳!」から始まって「偉大なる我が中華民族万歳!」へとエスカレートしていき、一党支配体制維持を国家の最大目標とする習近平国家主席にとって有利に働いてはいた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中