最新記事

東京五輪

ホテルで24時間監視、食事はカップ麺の「おもてなし」 欧州選手団がマジギレの東京五輪プレ大会

2021年5月15日(土)19時15分
さかい もとみ(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

問題点1「空港内で選手をほったらかし」

「どうして、大会のオフィシャル(運営スタッフ)がゲートまで迎えに来ないのでしょうか?」

選手など関係者は大会への参加に当たり、「隔離免除」という特例で日本に入国した。欧州から来たチーム役員のひとりは、飛行機を降りたところに運営側誘導役の姿が見当たらないことに「これはおかしい」と感じたという。

「コロナで入国ルールが普段と違うのに、誰もチームのケアをしないなんてどういうつもりなんでしょうね。本気で五輪をやる気があるのでしょうか?」

感染対策上、到着以降の空港内での動線は定まっているが、誘導のスタッフもいなければ、手続きの段取りを書いたペーパーも配られなかった。そうこうしているうちに、同じ便で着いた複数国の選手が混ざり合って手続きを受ける事態になっていた。それでなくても日本の検疫手続きは不合理なほどにチェックポイントが多い。

「われわれが特例ルールで入国すると分かっているのに、対応はおざなりだった」と指摘するチームスタッフのひとりは、「選手は隔離を済ませていないのに、迷子になったらどうするつもりだったのでしょうね」といぶかっている。

今回の大会のスケールを東京五輪本番と比べてみると、飛び込みは26ある実施競技(※)のひとつで、出場国数は五輪の約5分の1、選手数では20分の1程度となっている。それでもコロナ対策の検疫手続きから入国、税関検査を合計した所要時間は、飛行機を降りたってからおよそ3時間要したという。これが五輪本番で各国選手団が一気に押し寄せると、手続きにかかる時間はどれほどまで膨らむのだろうか。

※一部の類似競技を一括りにした総数
 

問題点2「24時間監視で心の余裕がない」

次のポイントは宿泊施設での感染対策だ。選手らはホテルに泊まったが、外出はおろか、他の階にも行けない「缶詰め状態」に置かれたという

「日本の規制がとても厳しいので、まったく心の余裕がない」
「せめてホテルの庭や駐車場を自由に歩く機会があればよかった」

ドイツ水泳協会飛び込みヘッドコーチのルッツ・ブシュコウ氏はこう嘆く。

エレベータ前には24時間の監視員つき。選手たちは競技参加どころか精神が病んでしまうような環境に押し込まれていたわけだ。

閉鎖空間にいるのがあまりにつらく、選手たちは規制つきでいいから外出させてくれ、と懇願していたという。コーチが見るに見かねて、「美しいトーキョーをこの目で見たいと言っている」と都内巡りのバスを出してほしいと運営側に訴えたが聞き入れられなかった。

競技会場に向かうシャトルバスの車窓から、人々が自由に行動しているのを見て、「外を歩きたい」と感じたのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中