最新記事

感染症対策

欧州各国、コロナ検査キット無償配布 一方で製薬会社の「暴利」批判も

2021年5月15日(土)12時55分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
韓国のSDバイオセンサー製の新型コロナウイルス抗原検査キット

スイスの薬局で無償配布が始まった新型コロナウイルス抗原検査キット。韓国のSDバイオセンサー製、スイスの製薬大手ロシュ販売で1パック5個入り(筆者撮影)

<日本からすれば無償配布があるだけで十分な話だが、実際に開始された国では問題も──>

フランスやドイツでは、短時間で結果がわかる新型コロナウイルス抗原検査が医療機関や薬局などで無料で受けられる。オーストリアでは、3月から15歳以上の国民に、この抗原検査キットが薬局で無償配布されている。

4月9日からは、イギリスでも、イングランド地方において全市民に抗原検査キットの無償配布が始まった。自分で検査を行い、陽性の判定が出た場合はPCR検査を受けることが必要となる。

スイスでも4月7日から、全国民860万人への検査キットの無償配布が薬局で始まった。数日で不足が生じたものの再出荷され、スイス放送協会によると、配布から1カ月経った現在までに国民のおよそ3分の1が受領した(1000万個配布)。

高精度の検査キット、1人毎月5個

スイスで無償配布されている検査キットは、韓国のSDバイオセンサー製で、スイスの製薬大手ロシュが販売している。キットの説明書によると、検査者自身が行った場合の本検査の感度(正しく陽性が出る確率)は82.5%で、特異度(正しく陰性が出る確率)は100%となっている。変異株の有無もわかる。

健康保険証を持参すると薬局でもらえ、オンラインでの申請を受け付けている薬局もある。年齢制限はなく1人につき5個配られ、今後、スイス政府の指示が変更になるまで毎月5個もらえることになっている。つまり定期的に使えば、1週間に1度の割合で自己検査できる。

もしも割り当て分の5個以上がほしい場合は薬局にて自費で購入できるそうだが、目下は不足気味のため、おそらく難しいだろう。

チューリヒ市内に住む筆者の知人は長期出張があり、配布を心待ちにして、配布開始当日に受け取りに行ったという。一方、チューリヒ近郊に住む友人は、朝、スーパーに買い物に行き、向かい側にある薬局に長い列ができていたのを見て配布が始まったことを思い出した。一旦帰宅して、健康保険証を持ってその薬局へ行き、夫婦とスポーツの試合であちこち出かける上の子ども(中学生)の分、計3パックを受け取った。下の小学生の子どもの分ももらえるとは知らなかったそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は6日続伸、日銀決定会合後の円安を好感

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    フラワームーン、みずがめ座η流星群、数々の惑星...2…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中