最新記事

イラン

イランで同性愛の男性を親族が惨殺

Man Allegedly Beheaded by His Family for Being Gay

2021年5月13日(木)18時57分
ジャック・ダットン
スペイン・マドリードのイラン大使館前でLGBT迫害に抗議する人々(2009)

スペイン・マドリードのイラン大使館前でLGBT迫害に抗議する人々(2009) Susana Vera-REUTERS

<革命防衛隊から届いた兵役免除通知で同性愛を知った親族の男3人に首を切断された疑い>

イランで5月上旬、20歳のアリレザ・ファゼリ・モンフェアド(通称アリ)が、同性愛者であることを理由に殺害される事件があった。アリが同性愛を理由に兵役を免れたと知った男性親族3人が、彼の首を切って殺したものとみられている。

webw210513_iran3.jpeg
fanpage.it/YouTube



報道によれば、イラン南西部アフワーズ出身のアリは、5月4日に殺害された。ロンドンに拠点を置くペルシャ語放送局のイラン・インターナショナルが8日に報じたところによれば、事件に先立ち、複数の親族がイラン革命防衛隊から送られてきた通知書を目にしていた。通知書には、アリの性的指向を理由に兵役を「免除」する旨が記されていた。

イランでは男性に2年間の兵役義務が課されているが、法律により「性転換などの道徳的・性的な堕落」が認められる者については、兵役を免除することが法律で定められている。通知書には、この法律に関する内容が含まれていたということだ。

イランではイスラム法の下で同性愛が禁止されており、違反した者は禁錮刑や鞭打ち刑、さらには死刑に処せられる可能性がある。

身の危険を感じていた

アリのパートナーだったアギル・アバヤットは人権報道機関のイラン・ワイヤーに対して、アリが最後に母親と話したのは5月4日の午後7時頃だったと語った。その後、彼は義理の兄弟と2人の従兄弟によって街から離れた場所に連れ出され、「首を切断された」という。

イランのLGBT権利擁護団体「6rang(6つの色)」によれば、アバヤットは、アリを殺した3人が彼の母親に電話をかけて、遺体のある場所を告げたと語った。母親はボルミという村にあるヤシの木の下に息子の遺体が置き去りにされているのを見つけた後、体調を崩して入院したという。

6rangは11日にNBCニュースに対して、これまでのところアリ殺害に関連して逮捕者は出ていないと述べた。

BBCペルシャ語放送は7日に、アリは家族から危害を加えられることを恐れて、パートナーと共にトルコに移住してヨーロッパに亡命を申請する計画を立てていたと報じた。

複数の人権団体や活動家、弁護士や政治家がアリ殺害を非難している。

カリフォルニア州議会のスコット・ウィーナー上院議員は10日、ツイッターに次のように投稿した。「またもやLGBTQのイラン人が、同性愛を理由に惨殺された。家族によって首を切断されたのだ。アリレザ・ファゼリ・モンフェアドは、パートナーと共に国外に脱出しようとしていたところだった。世界のあまりに多くの地域で、LGBTQの人々が危険にさらされている。私たちはそれを黙って見ている訳にはいかない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中