最新記事

豪中関係

オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

Why Australia-China War Talk is Rising Between the Two Nations

2021年5月7日(金)16時21分
ジョン・フェン
2017年の米豪軍合同演習

台湾有事となればオーストラリア軍は支援に駆け付けるのか(写真は2017年の米豪軍合同演習) Jason Reed-REUTERS

<コロナ、貿易、台湾と、対立を深める豪中間に忍び寄る「戦争の足音」は、アメリカや日本にとっても他人事ではない>

オーストラリアと中国の関係が悪化の一途をたどっており、「戦争の足音」を聞く議論まで浮上している。

とはいえ多くの有識者は、現段階で直接的な武力衝突が起きる可能性は低いと考えている。緊張の高まりや外交面でのいさかいはあっても、中国は依然として、オーストラリアにとって最大の貿易相手国(オーストラリア政府の最新のデータによれば年間1940億ドル規模)だ。

軍の規模でも、中国は大半の国の軍を数で上回っている。3月に発表された予算案では、国防費は2100億ドルとオーストラリア(330億ドル)の6倍以上だ。

それでもオーストラリアのスコット・モリソン首相は、インド太平洋地域の安全保障の重要性を強調するジョー・バイデン米大統領と結束している。オーストラリアが日米豪印戦略対話に参加したことがそれを物語っており、中国の反発を招いた。

近年は対立と報復の応酬に

オーストラリアと中国の間には、幾つもの対立がある。オーストラリア政府は2018年、自国の5G通信網から中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の製品を締め出し、2020年には新型コロナウイルスの起源について中国での独立調査の実施を要求した。こうした措置への報復として、中国は数多くのオーストラリア製品に反ダンピング関税を発動するなどして輸入を妨害した。

さらに中国は5月6日、オーストラリアとの戦略経済対話(貿易交渉のための外交的メカニズム)の枠組みで行われる全ての活動を停止すると発表。オーストラリアが両国間の「正常な交流や協力を妨害している」と非難した。オーストラリア政府が4月、中国の広域経済圏構想「一帯一路」について、ビクトリア州政府が中国側と結んだ協定を破棄したことに対する報復だ。

オーストラリアは、香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害についても中国に責任を取らせようとしてきたが、中国はこれも「内政干渉」だと拒絶してきた。

一連の対立は、いずれも外交とイデオロギーに関するものだが、モリソン政権の高官が最近行った発言には両国で驚きの声があがった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

自工会会長、米関税「影響は依然大きい」 政府に議論

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金

ワールド

EUのエネルギー輸入廃止加速計画の影響ない=ロシア

ワールド

米、IMFナンバー2に財務省のカッツ首席補佐官を推
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中