最新記事

米中関係

ピンポン外交50周年 当時15歳の女子選手が目にした中国の今昔と舞台裏

PING PONG DAYS IN CHINA

2021年5月14日(金)12時40分
スコット・マクドナルド

貧しくて世界から孤立していた71年の中国では、文化大革命が進行していた。「あのとき中国人の通訳やガイドは『今は女性も外に出て働いている。そのための保育施設もある。社会はいい方向に向かっている』と言っていた」

アメリカの卓球選手は、中国の内情を知るための西側世界の「目」となった。帰国すると、取材攻勢と講演旅行が待ち受けていた。「飛行機を降りたら、すぐ記者会見場に連れていかれた。何百台ものカメラが待ち構えていた。『これから記者会見に出てもらえます?』などとは聞かれもせず、ただ言われたとおりやりなさいという感じだった」と、ボチェンスキーは言う。

ニュース番組などに出演するため、ボチェンスキーはアメリカ各地を回った。翌年、アメリカ側が返礼として中国の卓球チームを2週間招いたときには、交流試合に参加するためさらに忙しくなった。

中国チームの訪米時のハイライトは、米中両国代表がホワイトハウスにリチャード・ニクソン大統領を訪問したことだ。ニクソンは前年に米卓球代表が訪中したときから、中国との交渉の糸口を探っていた。

ニクソンが掲げた長期計画

米卓球代表が中国を訪れていた71年4月13日、ニクソンはヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らとの会話記録の中で、対中関係について長期的な計画を持っていると語っている。

「中国への対応には、いくつかの長期的な理由がある。実に重要なものだ。それが現在の出来事につながっている。ピンポンだ」と、ニクソンは語っている。「ここで可能な限りポイントを稼ぎたいが、(卓球を)利用しているように見えるのは避けたい。ここには(対中関係よりも)はるかに重要な駆け引きも絡んでいる。ソ連のことだ。卓球代表の訪中はソ連を激怒させる。(だが)中国との駆け引きも、もちろん重要だ」

当時、米中両国が連絡を取り合う手段はほとんどなかった。しかし会話記録の中でニクソンは、中国が世界各地で西側との関係改善に向けた「小さなサインをたくさん出している」と語っている。「雪解けは近いと、ずっと前からにらんでいた」

米中の国交正常化が実現したのは79年。ニクソンが退任した後だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

ベネズエラ沖で2隻目の石油タンカー拿捕、米が全面封
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中