最新記事

中台関係

台湾、中国本土からのハイテク求人を禁止

Taiwan Bans Companies From Hiring Employees in China as Tensions Rise

2021年4月30日(金)15時57分
ニコール・ファラート
建設中のフォックスコンの工場

建設中のフォックスコンの工場(米ウィスコンシン州、2020年8月) Brian Snyder-REUTERS

<半導体の人材流出を阻止するため労働部が決定した罰則付きの強硬手段>

台湾問題をめぐって米中間の緊張が高まるなか、台湾の労働部(労働省に相当)は、台湾の人材派遣会社が中国本土からの求人情報を出すことをいっさい禁止する。

Nikkei Asiaが独占入手した情報によれば、台湾労働部は通達を出し、その中で「米中間の地政学的な緊張の高まり(やアメリカの対中半導体禁輸措置)により、中国の半導体開発は打撃を受けている。中国は半導体の国内調達網を構築するため、台湾の優秀な半導体エンジニアの引き抜きをこれまで以上に積極的に行っている」と指摘した。

台湾のこの決定は、中国へのハイテク部門の人材流出を阻止するための強硬手段であり、通達に違反した者には罰金も科す。特にIC(集積回路)や半導体など、台湾がリードする分野の重要な求人で違反があった場合は相応の措置を取るとしている。

Nikkei Asiaによれば、労働部の通達は「(中国での)半導体やICに関する仕事に人材を紹介した場合には、罰金額はより高くなる」とする。また台湾最大手の人材紹介サイト「104人力銀行」は同紙に対して、新たな規制は、中国に製造拠点を持つ台湾企業にも適用されると述べている。

求人情報の取り下げを急ぐ各社

iPhoneの組み立てを請け負い、中国に複数の大規模工場を所有するフォックスコン(鴻海科技集団)のような台湾企業にとっては厄介な問題だ。104人力銀行の広報担当者は、フォックスコンなどの企業は「まず、現在ネット上に掲載している求人情報を全て削除し、その後改めて、台湾経済部の投資審議委員会から中国での操業を認められている子会社の名前で求人を出し直さなければならない」と説明した。

Nikkei Asiaの報道によれば、104人力銀行は4月28日に全てのクライアントに対して、中国本土での求人情報を削除するよう書簡で通知。「法律違反を回避するために、できる限り迅速に、中国での求人情報の掲載を取り下げてください」と要請した。

中国は台湾人にとっての主要な雇用先で、台湾の英語メディア「チャイナ・ポスト」によれば、大学を卒業した台湾の若者の約55%が中国で働いている。また台湾の英字新聞「タイワン・ニュース」は、中国本土で働く台湾市民の数はここ数年で減少しているが、それでも台湾の外で働く市民の就職先として最も多いのは中国だという行政院主計総拠(DGBAS)の報告を紹介した。

台湾の外で働くことには、金銭的なメリットもある。チャイナ・ポストは、中国の労働者の収入が台湾の労働者の約1.72倍だという、2019年の104人力銀行の調査結果を紹介している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中