最新記事

女性論

【フェミニズムの入門書8選】これから勉強する方におすすめ本を紹介

2021年4月21日(水)14時24分
リベラルアーツガイド

(4)ハンナ・マッケンほか『フェミニズム大図鑑』

英語圏のフェミニストが執筆した、文字通りヘビー級の図鑑です。

英国における近代フェミニズムから、平塚らいてう、家父長制、ライオット・ガールムーブメント、オンラインフェミニズムなどの最前線のテーマまで百家争鳴のフェミニズムをわかりやすく紹介しています。

当時の広告や報道写真、風刺画のほか、著名なフェミニストたちの肖像写真やプロフィールなどもオールカラーで掲載されており、文字でしか知らなかったあの歴史上の人物に一気に親しみがわくというミーハーな気分も満たしてくれます。

「フェミニズムとは何か? その答えはここにある」という序文につづられた力強い一節に間違いありません。フェミニズムが現在進行形で国際的なムーブメントであることを実感する1冊です。

book202104211419_04.jpgフェミニズム大図鑑
created by Rinker

(5)大越愛子『フェミニズム入門』

2021年3月にこの世を去った大越愛子の代表作です。少し学びを進めた方のためのフェミニズム理論・思想入門です。

内容

リベラルフェミニズムからポストモダンフェミニズムポストコロニアルフェミニズムなどフェミニズムの諸潮流の解説

ジェンダー、セクシュアリティなどのキーワードの解説

・『青鞜』から発展した日本のフェミニズムの紹介

上記のような基礎的なテーマを押さえつつ、ケアの倫理やポルノ論争などフェミニストでも意見の割れる新しいテーマも扱っており、1996年に書かれたものとは思えないほどです。

大越は本書を通して、フェミニズムがジェンダー、セクシュアリティ、リプロダクションの3点を問題とすることで、これまで男性がつくり上げてきた文化や社会、思想の体系が、いかに限定的で欺瞞にみちているかを暴いてきたと繰り返し主張します。

フェミニズムは、それらの体系を解体しようとする日常的、理論的実践であるとし、この解体のあとにこそ、私たちの意識や生き方、身体感覚や性的快感がようやく自由になり、尽きせぬ生の快楽の泉があるのだと述べ、筆をおきます。

大越のバトンを引き継ぐためにも、大越フェミニズムのそこはかとなくポジティブな構想に、ぜひ直接触れてみることをおすすめします。


book202104211419_05.jpgフェミニズム入門 (ちくま新書)
created by Rinker

(6)シンジア・アルッザほか『99%のためのフェミニズム宣言』

book202104211419_06.jpg99%のためのフェミニズム宣言
created by Rinker

「私たちはまだ連帯できる――ほんとうの敵は資本主義だ」

マルクスの『共産党宣言』を一度読まれた方ならすぐにピンと来るかもしれません。1%の富裕層ではなく、「99%の私たち」のための連帯を呼びかけるこの本は、フェミニストによる、フェミニストのための反資本主義フェミニズム宣言です。

2021年4月現在、「報道ステーション」のCMの炎上をめぐって、新自由主義の価値を体現したポストフェミニズムに注目が集まっていますが、個の成功のみが追求され、私たちの生がずたずたに分断されている状況に、正面から待ったをかける胸アツ必至の1冊となっています。

参考

ちなみに、大学院生で訳者の恵さんは3ピースバンドBROTHER SUN SISTER MOONのベース&ヴォーカル担当です。→BROTHER SUN SISTER MOONについてより詳しくこちら

全て英詞のオルタナティブ・ポップ・ロックは読書中のBGMにおすすめ。→こちらから聞くことができます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで154円台に下落、日米中

ワールド

米副大統領「核戦力検証は安保に重要」、トランプ氏の

ワールド

米中、船舶入港料1年停止へ 首脳会談で合意

ビジネス

スイス中銀理事「短期的デフレは容認」、現行の拡張的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中