最新記事

少数民族

中国の弾圧で人権を踏みにじられるウイグル女性たち 悲惨な虐待の実態と、必死の抵抗

UIGHUR WOMEN AT THE FORE

2021年4月13日(火)14時47分
シミナ・ミストレアヌ(フリーランスジャーナリスト)
新疆での弾圧の報道に携わる記者のグルチェフラ・ホジャ

新疆での弾圧の報道に携わる記者のグルチェフラ・ホジャ HOJA’S DAUGHTER FOR FOREIGN POLICY

<非人間的な弾圧が続いても黙り続けることなく、中国政府の強引な同化策に抗う力を発揮する>

中国の新疆ウイグル自治区で行われている少数民族弾圧は、この最悪の専制国家にしても最高に陰湿なものと言える。少なくとも2017年以降、収容所に送られたウイグル人などは推定で100万人以上。どこにでもある監視の目、強制労働や妊娠中絶・不妊手術の強制疑惑、宗教施設や民族社会の破壊、そして墓場荒らしの報告もある。

アメリカの前国務長官マイク・ポンペオは退任間際の1月19日に、中国政府の行為をジェノサイド(集団虐殺)と呼んで非難した。対して中国政府は、当然のことながらテロリズムと分離主義に対する正当な反撃だと主張している。

いずれにせよ、中国政府の最も許し難い政策で虐げられているのは女性たちだ。人権問題の研究者エイドリアン・ゼンツによると、同自治区政府は昨年だけで、出生率を下げるための不妊手術や避妊具の強制装着などに3700万ドルを投じた。結果、同自治区の出生率は前年比で24%も下がった。中国全体では4・2%減だから、異常な減少幅だ。

それでも女性たちはウイグル人の自由のため、そして自分自身が強くなるために誰よりも果敢に戦っている。運よく国外に脱出できたウイグル人やカザフ人の女性たちが公の場で自らの体験を語る例は、この1年ほどで急速に増えている。

19年にはウイグル人の女性アシエ・アブドルアヘドが初めて、強制収容所の存在を示す秘密文書を暴露した。これに続いて、他の女性たちも米議会や国連で証言し、報道機関の取材にも応えた。肉体的・性的虐待についても率直に語った。これで支援の輪が広がり、中国政府に対する圧力も強まった。

210406p18_UGL_02.jpg

収容所の実態を告発したアシエ・アブドルアヘド AHMEDJAN KASIM FOR FOREIGN POLICY


アメリカは昨年、新疆ウイグル自治区での政策に関与する当局者に経済制裁を科した。強制労働の産物とされる綿製品やトマトの輸入禁止にも踏み切った。昨年10月にはドイツ主導の39カ国が国連で中国のウイグル政策を非難した。22年に開催予定の北京冬季五輪のボイコットを呼び掛ける人権団体もある。

女性たちは、ただ単に悲惨な体験を語るだけではない。自分の職業を生かし、ジャーナリズムや法律、文学、芸術といった分野で抵抗運動に弾みをつけている。「このジェノサイドにおいてウイグル女性は最も弱い立場にある」と言うのは、アメリカの首都ワシントンにいるウイグル人弁護士レイハン・アサト。彼女は新疆で身柄を拘束されている兄の解放を求めている。「性的ないし医療的手段と強制労働によって肉体的な自主性さえ奪われている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中