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親の働く姿を見ていないために、職業へのイメージを持てない日本の子どもたち

2021年3月31日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

今の日本では、親が働く姿を見ないどころか、親の職業すら知らない子どもも少なくない。OECDの国際学力調査「PISA 2006」では、15歳の生徒に父親の職業を尋ねているが、日本の生徒の15%は「知らない」か「サラリーマン」といった曖昧な回答になっている。将来の志望職が明確でない生徒は21%だ。

この2つの指標をとった座標上に、主要7カ国を配置したグラフにすると<図2>のようになる。

data210331-chart02.jpg

日本では、父親の職業を知らない生徒、将来の志望職が明確でない生徒が他国と比べて多い。職住分離による、働く親のモデルの不在というのがあるだろう。だが職住分離が進んでいるのは他国も同じで、仕事について親子で語らう頻度の違いというのもあるかと思う。日本の子どもは、家庭において「見る」「聞く」という意味での職業人のモデルに接する機会が乏しい。

しかしコロナ禍でテレワークが増える中、今後は変わっていくだろう。働く姿を実際に見せることで、家庭も(意図せざる形で)キャリア教育に貢献できるようになる。具体的な話題もあることから、親子で仕事について語らう機会が増えることも期待できる。こうしたコミュニケーションの効果は、メディアで受動的に情報を得るよりもはるかに大きいことは言うまでもない。

<資料:総務省『国勢調査』(2015年)
    OECD「PISA 2006」

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