最新記事

世界の最新医療2021

勃起不全(ED)患者は、心臓病や死亡のリスクが高い:米国内分泌学会

ED LINKED TO HIGHER RISK

2021年3月31日(水)17時32分
ロージー・マッコール
医師と患者(イメージ)

重大な健康リスクの兆候である可能性があるため、放置するのは危険だ PORNPAK KHUNATORN/ISTOCK

<性的機能不全は血管系の疾患が原因の場合もある。体調不良や健康状態の悪化を知らせる兆候に注意を>

中高年の男性を対象とした長期的な調査により、勃起不全(ED)を訴える男性は、死亡や心血管疾患のリスクが高いことが明らかになった。米国内分泌学会の2020年の年次総会で発表され、その後学会誌に掲載された研究において、EDおよび早朝勃起不全(性的欲求の低下と関連しているとは限らないもの)が、死亡リスクの増大と関連していることが判明した。

この研究は、03年から05年にかけて欧州男性加齢研究(EMAS)に参加し、なおかつ調査票で性的機能に関わる症状があると自己申告していた、40~79歳の男性1913名を対象として行われた。

本調査から12年(±3.3年)後にフォローアップ調査を行ったところ、対象者の約4分の1が死亡していたことが分かった。なかでも最も死亡リスクが高いのは、遊離テストステロン値が最も低く、卵胞刺激ホルモン値が最も高いグループに属する男性だった。

一方、性的機能に関わる症状、特にEDを申告していた男性は、テストステロン値が正常範囲にある場合でも、こうした症状を申告していなかった者に比べて死亡リスクが高かった。

性的機能の症状は体調不良の兆候かも

こうした結果となった理由について研究者は、血管系の疾患も、性的機能不全の原因になり得ることを指摘する。性的機能に関わる症状は、心血管系のリスクにつながる予兆である可能性があるのだ。

今回の研究を主導したルーベン・カトリック大学のリーン・アントニオはこう警告する。「性的機能に関わる症状は、体調不良や健康状態の悪化をいち早く知らせる兆候かもしれない、と用心すべきだ。心血管疾患や死亡のリスクが上昇している危険性もある」

心血管系リスクを特定・治療するためには、専門医の診察を受け、性的機能に関わる症状について相談することが重要だと同氏は強調した。

一方、マウント・サイナイ病院のロナルド・タムラー博士は、テストステロン値の低下と性的機能不全が、罹患率および死亡率上昇の前兆となる指標であることは先行する研究でも明らかになっていると指摘した上で、今回の研究はこの結論を改めて裏付けるものだと述べた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

カナダ首相、米と貿易交渉再開の用意 問題広告は週明

ワールド

トランプ大統領、中南米に空母派遣へ 軍事プレゼンス

ワールド

米朝首脳会談の実現呼びかけ、韓国統一相、関係改善期

ワールド

ロシア特使が訪米を確認、「対話継続を示す証拠」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中