最新記事

弾劾裁判

弾劾無罪でも、共和党の「トランプ離れ」は始まった

A Grand Old Identity Crisis

2021年2月15日(月)18時05分
マイケル・ハーシュ

弾劾裁判の評決後、トランプを厳しく批判したマコネル上院院内総務(2月13日) U.S. Senate TV/Reuters

<弾劾裁判では無罪となったトランプだが、求心力の低下は明らか。共和党では党の将来を左右する「内乱」が始まろうとしている>

共和党はついに、ドナルド・トランプ前大統領と距離を置き始めたのだろうか。

1月6日に起きたアメリカ連邦議会襲撃事件をめぐるドナルド・トランプ前大統領の弾劾裁判で、上院は2月13日、無罪の評決を下した。トランプ前大統領は事件を扇動したとして弾劾訴追されていたが、有罪を支持する票が評決に必要な出席議員の3分の2に10票及ばなかった。

共和党は今も、おおざっぱに言えばトランプの党だ。その証拠に、造反して有罪に賛成した7人の議員のうちの1人、ビル・キャシディ上院議員は地元ルイジアナ州の共和党員たちから強い突き上げを食っている。

だが「トランプ無罪」というニュースの見出しだけからこの弾劾裁判を判断するのは木を見て森を見ないに等しい。有罪57無罪43という結果からは、アメリカ史上、最も党派を超えて有罪に支持が集まった弾劾裁判だったと言うことができる。つまりトランプやその支持者たちはこの弾劾裁判を「党派的」とか民主党の「独り芝居」などという言葉でレッテル貼りするのは難しくなった。

前回の弾劾裁判との明らかな「違い」

また、共和党の重鎮の一人であるミッチ・マコネル上院院内総務は、退任した大統領を弾劾するのは違憲だという考えから無罪に票を投じる一方、「恥ずべき職務怠慢」を行ったとトランプを激しく非難した。公の場でのこうした非難に意を強くした人々が今後、トランプに対する民事訴訟を起こす可能性もある。

昨年のロシア疑惑をめぐる弾劾裁判で共和党からの造反議員がほとんどいなかったのとは対照的に、今回はトランプへの否定的な見方が広がりつつある。それは世界のアメリカに対する見方も変えるかも知れない。

国際協調主義のジョー・バイデン新大統領が就任してもなお、多くのアメリカの同盟国はいわゆるトランプ主義----4年間のトランプ政権を特徴づけた(そして共和党を定義づけるに至った)たちの悪い1国主義や対外強硬主義、新孤立主義の復活を恐れていた。

共和党では今、党の未来を巡る内乱が起きつつあるのかも知れない。その成り行きは、共和党員たちの世界観やその外交政策にも影響を及ぼす可能性がある。

片方の陣営にいるのは、マイク・ポンペオ前国務長官やジョシュ・ホーリー上院議員といった、トランプに強い忠誠を誓う人々だ。ポンペオもホーリーも2024年大統領選挙への出馬が有力視されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体開発グロックを200億

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中