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日本の小学生のスマホ所持率が、貧困層と富裕層の両方で高い理由

2021年1月13日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

早いうちからスマホに慣れさせることは、未来社会を生き抜く力の素地を養う上で有益だが、ゲームへののめり込みや有害情報との接触など、負の側面も併せ持っている。後者が、恵まれない家庭の子どもに集中するとしたら一大事だ。健康や勉学にも悪影響が及び、家庭間での「育ちの格差」が拡大することになる。用途について管理・監督するよう、保護者の意識の啓発が求められる。

<図1>は低学年のデータだが、思春期にさしかかった高学年(5・6年生)と対比すると<表1>のようになる。タブレット、パソコンの所持率の階層差も載せている。

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スマホの所持率が「U字」型であるのは高学年でも変わらない。タブレットも似たような傾向だが、パソコンの所持率はどの年収階層でも低い。高学年の富裕層でやっと5%になる程度だ。日本の子どものパソコン所持率が低いのは知られているが、機器を買えないという経済的理由よりも、必要性が認識されていないことのほうが大きいようだ。

インターネットは検索して情報を得るためのルーツであって、場所をとるパソコンは不要でスマホで事足りると思われている。ネットで得た情報を加工し、独自の創作物として発信する、という用途が頭にある保護者は多くない。だが、これからの時代で求められる姿勢は「創作」と「発信」で、パソコンはそのために不可欠といえる。文部科学省は「児童生徒1人1台端末」という構想を示しているが、パソコンの積極的な用途にも気付かせたい。パソコンの所持率がこうも低いと、学校教育の情報化(課題提出や庶務連絡をネット経由で行う)も難しい。

家庭の年収別に情報機器の所持率を見てみると、知られざる様々な課題が浮かび上がってくる。

<資料:国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』2016年度

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