最新記事

オーストラリア

絶滅していなかった......世界最小の有袋類ピグミーポッサム発見される

2020年12月14日(月)16時00分
松岡由希子

森林火災で絶滅が懸念されたチビフクロヤマネ(別名:ピグミーポッサム) Pat Hodgens-twitter

<森林火災によってカンガルー島では絶滅したのではないかと懸念されていた世界最小の有袋類チビフクロヤマネ(別名:ピグミーポッサム)が発見された......>

豪州では、2019年9月頃から2020年2月まで続いた大規模な森林火災により、南東部を中心に、1700万ヘクタール以上の国土を焼失した。

南オーストラリア州のカンガルー島は、コアラなどの哺乳類220種、エミューをはじめとする鳥類260種らが生息する生物多様性の豊かなエリアとして知られる。しかし、この森林火災によって、島西部の低草原地域の大部分が焼失するなど、島の約半分にあたる21万606ヘクタールが被害を受けた。絶滅危惧種や固有種をはじめ、多くの動物たちは生息地を失い、危機にさらされている。

なかでも、有袋類の一種で世界最小のチビフクロヤマネ(別名:ピグミーポッサム)は、島内で113匹の生息が確認されていたが、森林火災によって生息地のほとんどが失われ、カンガルー島では絶滅したのではないかと懸念されていた。

分布域の約88%が森林火災によって焼失した

豪州の自然保護団体「カンガルーアイランド・ランド・フォー・ワイルドライフ(KI LfW)」は、2020年12月、カンガルー島内20カ所を調査し、森林火災の発生以降初めて、被害を免れたエリアで、チビフクロヤマネを発見した。



一連の調査では、チビフクロヤマネのほか、ダマヤブワラビーやチャイロコミミバンディクートなど、20種以上の野生動物が確認されている。

生態学者のパット・ホジンス氏は、英紙ガーディアンの取材に対して「チビフクロヤマネの分布域と推定されていた範囲の約88%が森林火災によって焼失したため、その個体数に甚大な影響があったことは明らかだ」として今回の発見の意義を強調するとともに、「生き残ったチビフクロヤマネの保護が必要だ」と訴える。

個体数が回復するまでは数年から数十年を要する

体重10グラム未満の小さなチビフクロヤマネにとって最大の脅威は野猫だ。これまでに野猫の胃の中で複数のチビフクロヤマネが見つかっている。

森林火災がカンガルー島の生態系にもたらした被害の全容はまだ明らかになっておらず、島内で野生動物の個体数が回復するまでは数年から数十年を要する可能性がある。

ホジンス氏は、「森林火災によって個体数がどのように変化したのか明らかになっていない種が多く、これらの個体数が長期的にどう変わるのかもわかっていない」としたうえで、「我々は、後世にわたってこれらの種を保護するためにできる限りのことを尽くす義務を負っている」と説いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中