インタビュー:中国レアアース規制「輸出減、3月以降に顕在化」=三菱UFJリサーチ・清水氏
レアアース(希土類)の元素記号。2月6日撮影。REUTERS/Dado Ruvic
Yusuke Ogawa
[東京 23日 ロイター] - 中国税関総署が20日公表したデータによると、1─2月のレアアース(希土類)磁石の日本への輸出量は前年同期比9.5%増の約444トンだった。高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁をきっかけに、中国政府は対日輸出規制の強化を発表。モーターなどに使われる磁石の輸出量は1月に約9%減少したが、2月は一転して3割以上増えるなど、実態の評価が難しい。
今後の輸出量の推移や日本の産業界に与える影響について、国際希土類工業協会(REIA)の顧問を務める三菱UFJリサーチ&コンサルティングの清水孝太郎主席研究員に話を聞いた。
清水氏は「実際に日本向けの輸出手続きは非常に厳しくなっており、3月以降に影響が出てくるだろう」と指摘した上で、「中国にとってレアアースは外貨獲得の重要な手段であり、輸出がゼロになるほど急激に減る可能性は低い」と話した。一問一答は下記の通り。
――対日輸出規制の影響はすでに出ているのか。
レアアースは全17種類あるが、規制の運用状況は種類によって異なる。(ハイテク製品の生産に必要な)重希土類は規制が厳格化されている一方、軽希土類は比較的緩やかな場合もある。トータルの輸出量が前年比で増えていても、すべての種類が伸びているわけではない。
また今回の統計は、規制強化前に許可された輸出分が反映されている可能性が高い。実態としては、対日輸出の手続きは非常に厳しくなっている。これまでは抜き打ち検査であったものが、現在は全数検査に近い形で行われており、物理的に時間が相当かかっている状況だ。この遅れの影響は、3月以降の統計に表れてくるだろう。
――具体的にどのような種類で調達に支障が生じているのか。
代表的なものは、ネオジム磁石の耐熱性を高めるために不可欠な「ディスプロシウム」だ。ハイブリッド自動車や電気自動車(EV)のモーター、風力発電用の風車、エアコン、さらにはパソコンといった幅広い製品に使われており、これが不足すると日本企業のサプライチェーン(供給網)の打撃となる。
もう一つの重要品目は「イットリウム」である。これは戦闘機やジェット機のエンジンのコーティング剤として使用される。金属が超高温で溶けるのを防ぐ役割を果たしており、防衛・航空産業における戦略的価値は極めて高い。そのほか、半導体製造装置の部材や、自動車の排ガスを浄化するための触媒などに用いられる。
これらは重希土類に入り、中国の依存度が高く供給制限の影響が出やすい。昨年実施の規制対象に含まれており、すでに調達に支障が出始めている。価格も上昇しており、日本企業のコスト負担が増加し収益悪化につながる恐れがある。
――この先、対日輸出は大幅に減少するか。
現在は、輸出を一部で止めているというよりは、スピードをコントロールしている状況だ。今後も急激に減る可能性は低いとみている。中国にとってレアアースは外貨獲得の重要な手段であり、完全に止めれば国内の輸出企業の不満が政府に向かいかねない。景気停滞が続く中、そのリスクは大きいはずだ。あくまでも外交上のカードとして最大限に利用する戦略をとっており、(中東危機をきっかけに地政学的状況が大きく変化する中)米中・日中関係に改善が見られれば、すぐに輸出が回復する可能性もあり得るだろう。
「対日輸出がゼロになる」との悲観論から、「小笠原諸島・南鳥島沖の開発計画が問題解決の切り札になる」といった楽観論まで、極端な意見が世の中で交錯しているが、いずれも実態を正しく反映しているとは言い難い。
(聞き手・小川悠介 編集:橋本浩)





