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「性能が貧弱すぎる」韓国の戦闘機計画からインドネシアが離脱か

2020年12月11日(金)15時30分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

昨年10月に展示された、韓国が開発中の次期戦闘機KF-Xの実物大モデル Josh Smith-REUTERS

<インドネシアが韓国の戦闘機開発から手を引くのは、その性能、装備の貧弱さのため>

8兆7000億ウォン(約8340億円)もの開発費が投じられる韓国の次期戦闘機(KF-X)開発計画が、試練に見舞われている。

韓国やフランスのメディアは7日までに、インドネシアがフランスからラファール戦闘機48機の購入を検討しているもようだと報じた。インドネシアは韓国の次期戦闘機KF-Xの開発計画に参加しているが、2017年以降、開発予算の分担金を滞納している。滞納の理由は「資金難」と説明されてきたが、その一方でフランス製の戦闘機を買うとは話のつじつまが合わない。もはや、韓国との共同開発への関心は失せたということだろう。

フランスのパルリ国防相は3日に出演したテレビ番組で、ラファールの売買を巡るインドネシアとの協議は「非常に順調に進んでいる」と明らかにした。インドネシアのプラボウォ国防相は今年、2度にわたって訪仏。ラファールの購入について話し合ったとみられていた。

韓国メディアの報道によれば、プラヴォ国防相は昨年の就任後、「国防予算と装備を全面的に見直す」と宣言し、米欧の戦闘機に対する関心を示していたという。また今年7月には国防次官がKF-Xについて「インドネシアが得られる利益が大きくない」と発言。現地メディアは「インドネシアはすでにKF-Xへの関心を失っている。財政的な条件も良くない」とうる軍消息筋の発言を伝えたという。

では、インドネシアがKF-Xへの関心を失った理由は何か。韓国紙・世界日報の軍事専門記者であるパク・スチャン氏は、「ステルス性能も、兵器の搭載能力もまともに備えないまま開発を進めた結果だ」と指摘している。

KF-Xは、韓国が初めて自力で開発する本格的な戦闘機だ。いきなり完ぺきなステルス性能を期待するのは無謀かもしれないが、インドネシアとしては、自国の要求水準に満たないものにカネを出し続けるわけにも行くまい。パク氏は続ける。

「2010年代中盤に開発が始まった機体(KF-X)が、1970~1980年代に開発された戦闘機(ラファール)に押されてしまう状況が発生したのだ。貧弱な兵装のためだ。KF-Xに搭載される航空兵装のうち目を引くのは、メテオ空対空ミサイルくらいだ。在来型の航空爆弾のほかに統合直接攻撃弾(JDAM)、韓国型精密誘導爆弾(KGGB)が追加されるが、KF-16にも満たない水準だ。多機能位相配列(AESA)レーダーを含む電子装備はなお開発中である」

参考記事:「日本の空軍力に追いつけない」米国と亀裂で韓国から悲鳴

ちなみに、KF-Xの兵装が貧弱なのは、文在寅政権の外交下手の影響が大きいことも付け加えて置く。

韓国の聯合ニュースは7日、インドネシアのラファール購入に向けた動きを受けて、韓国政府は確認に追われていると報じた。また、同政府はインドネシアがKF-Xの共同開発から離脱する可能性は低いと見ているものの、軍需産業の関係者らは離脱は「既定路線」と見ているという。

参考記事:「文在寅一派はこうして腐敗した」韓国知識人"反旗のベストセラー"が暴く闇

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ--中朝国境滞在記--』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。

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