最新記事

戦争犯罪

豪中炎上のフェイク画像を作成した過激アーティストが中国の「国民的英雄」に

Chinese Artist a National Hero After Australia War Crimes Tweet Causes Row

2020年12月3日(木)16時30分
ジョン・フェン

血塗られたカンバスの前に立つ「烏合麒麟」と思われる画家と遺体を覆い隠すモリソン豪首相を描き、微博で100万のいいね!を集めた画像 WUHE QILIN/WEIBO

<新たな作品は「人殺し」を隠蔽するモリソン豪首相に、戦争犯罪を「謝罪せよ!」と迫るもの>

オーストラリア軍の兵士がアフガニスタンの子供にナイフを突きつけている偽画像がツイートされて豪中間の外交問題に発展する一方、中国ではこの画像を作成したアーティストが国民的英雄として称賛を集めている。

このアーティストは、北京を拠点に活動している、これまでほとんど無名だったCGアーティストの「烏合麒麟」。11月30日に中国外務省の趙立堅報道官が問題の画像をツイッターに投稿すると、「烏合麒麟」の微博(中国版ツイッター)のフォロワーはそれまでの倍に跳ね上がった。

問題の偽画像(現在も趙のタイムラインのトップに固定されている)は、オーストラリア軍の兵士が笑いながら、アフガニスタンの幼い子どもを殺害しようとしているもの。本記事の執筆時点で、6万1000件の「いいね!」がついている。

中国外務省の報道官である趙がこの画像をツイートしたことに、オーストラリア政府は強く反発。中国政府に繰り返し謝罪を要求したが、中国側は画像がフェイクであることも認めておらず、謝罪も拒否している。

オーストラリアのスコット・モリソン首相は、問題の画像は「きわめて不愉快」だと非難し、ツイッターに画像の削除を要請。だがツイッターは、警告表示をクリックしないと画像が表示されないようにはしたものの、画像の削除は行っていない。

「モリソンへ」と題した新画像も

中国版『ランボー』を指す「戦狼」を自認する「烏合麒麟」の微博のページには、愛国心の強いユーザーたちが殺到した。「戦狼」は自己主張の強い、積極的な外交スタイルを表す言葉にもなっている。趙もまた「戦狼」と称されることが多い。

「烏合麒麟」は趙が画像をツイートしたことを称賛し、「僕の画像について、モリソンが何か言いたいようだが?」と皮肉っぽくコメントした。この投稿の後、彼のフォロワー数は急増している。「烏合麒麟」はさらに12月1日、「モリソンへ」と題した別の画像を投稿し、微博ユーザーからの熱狂的な支持を受けている。

新たな画像は、モリソンが遺体をオーストラリアの国旗で覆う一方で、一人の少年にカメラマンが殺到する様子を描いたもの。赤い服を着た少年は、カンバスに(オーストラリア軍による)残虐行為を描こうとしており、おそらく「烏合麒麟」自身を表していると思われる。そして画像には「謝罪しろ!」という刺激的な字幕。

この画像は微博で100万件を超える「いいね!」を獲得した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中