最新記事

アメリカ経済

コロナ対策で経済活動は一時後退あるいは緊急ブレーキ? ロックダウン再直面の米経済

2020年11月21日(土)13時46分

米国では新型コロナウイルスの新規感染者が再び急増しており、都市や地方で新たな行動制限を導入する動きが広がっている。写真はカリフォルニア州サンディエゴで、ビジネス活動の制限に抗議する人々。16日撮影(2020年 ロイター/Mike Blake)

米国では新型コロナウイルスの新規感染者が再び急増しており、都市や地方で新たな行動制限を導入する動きが広がっている。

「緊急ブレーキ」(カリフォルニア州)「凍結」(オレゴン州)「家でより安全に」(ペンシルベニア州フィラデルフィア市)「一時後退」(ミネソタ州)など呼び掛け方に違いはあっても、今回の措置は春に実施された規制に比べればずっと緩く、範囲も狭い。

当時、約2200万人の雇用を奪い、消費を消滅させて景気後退を招いた全面ロックダウンほどは経済的悪影響も出てこないだろう。


オレゴン大学のティム・デューイ教授(経済学)は「(前回のような)国内総生産(GDP)の3割に達するような打撃は見込んでいない。そこまでのマイナス要素は存在せず、景気回復が軌道を外れるとはなかなか想定しづらい」と述べた。

3月に完全に休業した店舗や工場、理美容室なども今回は多くの地域で営業を続けるとみられる。

その一因は多くの国民の行動が変わったからだ。製造業から小売店まで事業者は定期的に検温を行う態勢を整えたし、マスク着用も普及した上、着用を義務化した州も多い。一方消費者はネット通販や配送サービスを積極的に活用してお金を使い続けている。

週次データなどからも、直近で新規感染者が激増した後でさえ、経済活動の足場は崩れていないことが裏付けられる。

命を守る規制

足元で打ち出された規制の多くが対象にするのは、感染拡大という点で科学的に最も有害と証明された、密集状態の屋内で長時間、大きく呼吸するとかマスクなしでいるという行為だ。

既に痛手を受けている接客や娯楽といったセクターは一段と苦境に陥るだろう。米疾病対策センター(CDC)は19日、感謝祭休暇中の旅行については、完全には禁止しないものの手控えるよう強く勧告した。

今週新たな規制を発表した24州余りの多くは、飲食店やジムの屋内営業を休止させるか、何らかの制限を設けた。州の経済規模が国内最大のカリフォルニア州もこのグループに含まれる。一方で同州の春のロックダウンでは休業したショッピングモールやエステ、理美容室などは、一部制限はかかるが原則として営業を継続できる。

フィラデルフィア市は、20日から飲食店で屋内の食事が禁止される。これを受け、当地で2店舗を経営するタイラー・エイキン氏はテイクアウトと宅配を主体とする事業に切り替える方針だ。また23日にデラウェア州が導入する新ルールで、ウィルミントンにある同氏の店は収容人数を50%から30%に引き下げなければならなくなる。3月に経験した全店休業よりはましだが、収入減に伴う人員整理が必要になるかもしれない。

同氏は「これから(従業員との)かなりつらい話が待っている」と顔を曇らせる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

政治圧力で独立性揺らぐFRB、今週FOMCは0.2

ワールド

クックFRB理事、住宅ローン申請違反の証拠なし 市

ワールド

カナダ競争局、英アングロと加テックの合併を調査

ワールド

インド貿易赤字、8月は264億ドルに縮小
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中