最新記事

中国

香港を殺した習近平の次なる標的はアメリカの民主主義

THE SUBJUGATION OF HONG KONG

2020年11月17日(火)17時15分
ゴードン・チャン(ジャーナリスト、作家、弁護士)

香港の代議制民主主義はこれで終わりなのか? TYRONE SIU-REUTERS

<大統領選でアメリカが混乱するなか、中国は選挙で選ばれた代表を議会から追放し、香港における唯一の平和的変革の手段を封じてしまった。これを放置すれば、アメリカの民主主義への攻撃に発展しかねない>

香港の議会に当たる立法会で11月12日、民主派議員15人が辞表を提出した。香港政府が前日の11日、反中国的姿勢を理由に同僚議員4人の議員資格剝奪を決めたことへの抗議行動だ。

これに先立ち、中国政府の立法機関である全国人民代表大会常務委員会は、香港の議員たちに中国への忠誠を求める次のような決定を行っていた。「香港独立」を主張・支持する、香港に対する中国の主権を認めない、外国や外部勢力による干渉を求める、その他国家安全保障を脅かす行為を行った場合、議員資格を失うというものだ。

中国は事実上、代議制民主主義による香港の統治を11日に終了させたのである。フィナンシャル・タイムズ紙のジャミル・アンダリーニは同日、「中国による香港の『再植民地化』は近く完了する可能性がある」と指摘した。

1997年に香港がイギリスから返還される前、中国は「一国二制度」の下で50年間の「高度な自治」を約束していた。だが、返還後はこの国際公約を公然と破り続けてている。なかでも今年6月30日に施行された香港国家安全維持法は、中国本土の役人がやりたい放題できるようにする内容であり、実質的に香港の法治はこれで死んだ。

中国は選挙で選ばれた代表を議会から追放することで、香港における唯一の平和的変革の手段を封じてしまった。一時は全人口の4分の1以上に当たる推定200万人が参加した大規模な抗議行動を支えた若者と中流層は、今後も抵抗を続けるはずだ。

現地で6カ月間、民主化運動を報道し続けたアメリカ人ジャーナリストのマイケル・ヨンが語ったように、中国は人々の「反乱」に直面している。反乱は一時的に沈静化することもあるが、ほとんどの場合は「形を変えて」復活すると、ヨンは言う。「勇気のある香港人は戦い続ける。アメリカは彼らを支援しなければならない」

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がこのタイミングで香港に手を出したのは、アメリカが大統領選の混乱に気を取られていると判断したからだ。もしトランプ大統領が反応しなければ、間違いなく他のターゲット、例えばアメリカそのものを狙うことも可能だと考えるだろう。いずれにせよ、習政権はアメリカの民主主義だけでなく、代議制民主主義による統治の概念自体への攻撃を強めている。

中国政府や共産党系メディアは嵐のような反米プロパガンダを発し続けている。特に11月3日の大統領選後の不確実性を、自国の統治形態のほうが優れている証拠として利用しようとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英首相、辞任要求にも続投表明 任命問題で政権基盤揺

ビジネス

NEC委員長、雇用の伸び鈍化見込む 人口減と生産性

ワールド

中国BYD、米政府に関税払い戻し求め提訴 昨年4月

ワールド

EU、第三国の港も対象に 対ロ制裁20弾=提案文書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 9
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 10
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中