最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙めぐりトランプが募る法廷闘争募金 大半の使途は「その他」、その実態は──

2020年11月15日(日)12時02分

前述の配分比率に基づくと、1回の献金で例えば「セーブ・アメリカ」に5000ドル、さらにRNCに約3300ドルが入った後に初めて、残りの額が再集計基金に回る。再集計基金への献金額は、法律では2800ドルが上限だ。

あるトランプ氏支持者が仮に500ドルを献金すると、300ドルが「セーブ・アメリカ」に、200ドルがRNCに入り、「選挙防衛」のための再集計基金には1ドルも流れない。

ある共和党の政治ストラテジストはトランプ氏が、自分が良いと言うことのためなら何にでも小口の献金をしそうな支持者を誤解させていると指摘する。

RNCの元政治ディレクター、マイケル・デュハイム氏は「人々に正直に説明することが重要だ。特に、ポケットを探ってようやく25ドルをひねり出すような人々に対しては」と言う。「訴訟費用に回ると言っているのなら、訴訟費用に使うべきだ」

一方で、2016年にトランプ氏の政権移行チームに協力したオハイオ州の牧師、ダレル・スコット氏は、自分の献金がリーダーシップPACやRNCに流れても問題はないと話す。

「1本のズボンの両ポケットのようなものだ。左と右、どちらのポケットに入っても構わない」とスコット氏は言う。「最終的に、このお金はトランプ氏支持者が応援するであろう正当な目的に使われるのだ」

大量の訴訟

トランプ氏陣営は、投票で不正が行われたという主張の根拠を示さないまま、主要州の選挙結果を覆すために数々の訴訟を起こしている。

トランプ氏自身による訴訟は、共和党側の監視者が開票にアクセスできなかったなど、おおむね開票作業の不行き届きなどを訴えるものだ。法律専門家は、どれもバイデン前副大統領の勝利を覆すのに必要な票数の無効化につながるような広がりのあるものではないと話す。

多くの訴訟については、判事がすぐに却下した。共和党側を含む各州の選挙管理委員らは、大規模な不正があったことを否定している。一方、バイデン氏の勝利を認めた共和党上院議員は一握りで、多くはまだ認めていない。ただ一部の共和党議員は、トランプ氏の法廷闘争への自分たちの忍耐は、もうすぐ切れるかもしれないと述べている。

連邦選挙委員会のデータが示唆するのは、トランプ氏の募金活動は、選挙戦中に枯渇した陣営の財源補充を狙っているということだ。トランプ氏陣営は共和党の協力を得て、選挙戦開始当初はバイデン氏陣営に資金力で大きく勝っていた。しかし陣営が過去2年間で集めた16億ドルのうち14億ドルを使い果たすと、資金力の優位を失った。

10月半ばまでに、トランプ氏陣営と共和党の再選チームの残り資金は2億2350万ドルとなり、選挙広告を縮小せざるを得なくなった。選挙まであと3週間の時点で、トランプ氏陣営単独の資金は4300万ドルに減っていた。これに対し、バイデン氏と民主党側の資金はこの時点で合計4億3200万ドル、バイデン氏陣営単独では1億7730万ドルだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中