最新記事

中国

「燃える水道水」を3年間放置した自治体を動かした中国の証拠動画

Burning Tap Water Goes Viral in China After Natural Gas Seepage

2020年11月26日(木)15時10分
ジョン・フェン

水道水にライターを近づけると発火した People’s Daily, China/YOUTUBE

<水道水が油っぽいという住民の苦情を無視し続けた当局も、この異常な動画はさすがに無視できなかった>

蛇口から出る水道水にライターを近づけると発火する──中国北東部で撮影されネットに投稿された驚きの動画が、注目を集めている。動画の拡散を受けて、問題の地域では水道水の供給が停止された。

中国メディアの報道によれば、動画は遼寧省盤錦市の大窪区で撮影されたもの。この地域の住民たちは、少なくとも2018年からこのような現象がみられると言っており、ある女性は「3~4年前から」水道水がガスを含み「油が混じる」状況が続いていると語った。

ウェンと名乗るこの女性は、ソーシャルメディアに動画を投稿したのは自分だと明かした。彼女によれば、自宅の水道の蛇口から引火性の高い水が出てくる状態がしばらく続いていたものの、国営テレビの中国中央電視台(CCTV)や中国共産党の機関紙「中央日報」などの主要メディアが問題の動画について報じるまで、何の対処も講じられなかった。

動画は、女性の父親が洗面台の蛇口から流れる水にライターを近づけ、水が燃え上がる様子を撮影したもの。この動画にハッシュタグがつけられてネット上に拡散し、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)で2億5000万回以上、閲覧された。


「通常の水道水に比べると、私たちの地域の水道水は油っぽいように思う」とウェンはCCTVに語った。彼女の父親が夏に地元の水道局に苦情を申し立てたものの、問題への対処はなされず、代わりに水道料金を100元(15ドル)割引すると言われたという。

原因は「天然ガスの混入」

「水は無臭だがガスを含んでいるようで、母は健康への悪影響を心配していた」とウェンは言い、最初に異変に気づいたのは「3~4年前」だったと主張した。

CCTVの報道によれば、大窪区の住民たちはこの動画に驚かなかったという。この地域では100世帯以上で水に油が混じる状態が続いており、少なくとも1人の住民が、キッチンでガスこんろを使っていた時に水道を使ったら、水が燃え出したことがあると報告している。

「燃える水」の問題が報道された数時間後、地元自治体の当局者たちは、この区域一帯への水の供給を停止。予備調査を行い、11月24日にその結果を発表した。

大窪区の広報局は、大窪区の水道は地下およそ1370メートルから汲み上げる地下水を水源としているが、この地下水に天然ガスが溶け込んでいたことが問題の原因だったと説明した。また地元自治体は(住民たちが数年前から問題があったと主張しているにもかかわらず)、水道水が燃える現象は、最近になって地下水の保管装置を改良した後に発生したと述べた。

広報局は、復旧作業を行う間、地元住民には別の水源から引いた水を供給していると説明し、誤ってガスが混入した問題については、責任の所在を調査中だとつけ加えた。

盤錦市は、天然ガスの貯蔵施設があることで知られている。2019年11月には、国営の中国石油天然気集団(CNPC)の遼河油田分公司が、85億ドルを投じて、この地域で最大規模となる天然ガスの貯蔵施設を建設すると発表した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米BofA、利益率16─18%に 投資家に中期目標

ワールド

トランプ関税の合憲性、米最高裁が口頭弁論開始 結果

ビジネス

FRB現行政策「過度に引き締め的」、景気にリスク=

ワールド

米、ICBM「ミニットマン3」発射実験実施 ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中