最新記事

米司法

米最高裁判事に就任したバレット、早々に試練 大統領選などで難しい対応

2020年10月28日(水)11時37分

米連邦最高裁判事に正式就任した保守派のエイミー・コニー・バレット氏(写真)は、早速厳しい試練に直面する。大統領選関連や医療保険制度改革法(オバマケア)などを巡る訴訟で、難しい対応を迫られるからだ。ホワイトハウスで26日撮影(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

米連邦最高裁判事に正式就任した保守派のエイミー・コニー・バレット氏は、早速厳しい試練に直面する。大統領選関連や医療保険制度改革法(オバマケア)などを巡る訴訟で、難しい対応を迫られるからだ。

最高裁はバレット氏の判事就任前から、新型コロナウイルスのパンデミックを背景とした大統領選のルールに関する幾つかの訴えを処理している。26日には、野党・民主党が提起したウィスコンシン州での郵便投票の期限延長要請について、保守派5人の判事が反対、リベラル派3人が賛成し、却下という形になった。

一方先週には、共和党がペンシルベニア州の大統領選投票日後に届いた郵便投票の集計を制限すべきだと提訴した問題では、最高裁の判断が4対4と真っ二つに割れ、バレット氏の就任が今後にいかに大きな影響を及ぼすかが示された。

こうした中で、バレット氏は26日夜にホワイトハウスで開かれた式典で、政治から独立して振る舞うと改めて約束。「政治的な志向と判事としての任務を区別することで、司法の独自性が生まれる」と強調した。

ただトランプ大統領があえてこの時期にバレット氏を最高裁に送ったのは、大統領選を巡る訴訟で最高裁がトランプ氏に有利になる判決を下すための決定的な一票をバレット氏が投じてくれると期待したからだ。

カリフォルニア大学アーバイン校法科大学院で選挙法を研究するリック・ハセン氏は、大統領選からこれほど近い時期に新たな判事が生まれた事例は他に考えられず、バレット氏にとって「早速判事として洗礼を受けることになる」と指摘した。

ロヨラ大学法科大学院のジェシカ・レビンソン教授は、バレット氏はそうした政治的圧力によって困難な立場に置かれており、ことさら慎重に行動するのではないかとみている。

レビンソン氏は「バレット氏は長ければ40年にわたって判事を続ける可能性がある。その最初の大きな判断で、自身の独立性に疑問を抱かせる態度を取りたがるとは思えない」と話した。

大統領選後の11月10日には、オバマケアを廃止すべきかどうかの審理も行われる。最高裁は2012年と15年に2回、オバマケアを妥当とする判断を示した。賛成、反対の色分けはそれぞれ5対4と6対3だ。

バレット氏は以前、この2つの判決を批判しており、民主党は同氏がオバマケア廃止に賛成するのではないかと懸念して就任に反対してきた。もっとも法律専門家によると、今回最高裁でオバマケア廃止が多数意見になる公算が乏しいだろうという。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・強行退院したトランプが直面する「ウィズ・コロナ選挙戦」の難題
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力


ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ・メディア、第3四半期は損失拡大 SNS頼

ワールド

米航空便の欠航・遅延が悪化、運輸長官は感謝祭前の運

ビジネス

景気動向一致指数9月は1.8ポイント上昇、3カ月ぶ

ビジネス

日清食品HD、通期業績予想を下方修正 国内の原材料
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中