最新記事

米中対立

米中衝突が生むアジアの新たなパワーバランス

US-China Geopolitical Battle for Asia Shapes New Power Dynamic for Region

2020年10月26日(月)17時57分
トム・オコナー、ナビード・ジャマリ

「中国は平和な時代には世界貿易に大きな影響を与え、紛争の時代には、世界的な海上物流における圧倒的な優位性を活用できる。それは主としてアメリカの輸入業者の犠牲の上に構築された」と、報告書は述べている。

アメリカが中国の海軍力にさらに重点を置いていることについて、本誌の取材に応じた国家安全保障会議(NSC)は、中国の軍事力に関する国防総省の最新の年次報告書について触れた。

この報告書は、アメリカと中国の軍事力の差は急速に縮まっていることを指摘している。とくに3つの重要なカテゴリー(陸上発射型の従来型弾道ミサイルと巡航ミサイル、統合された防空システム、そして海軍の規模)で、中国はすでにアメリカを上回っている。

中国の急速な軍事力の増強は、2050年までに「世界クラス」の軍隊にするという習のビジョンに沿ったものだ。

トランプ政権は、米海軍を大幅に拡大し、オーストラリア、インド、日本と共有する「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの実施を支援する戦闘部隊2045計画を考案した。

この理念に対する各国共通の意気込みを示すために、11月に行われる海上合同軍事演習「マラバール」に初めて4カ国の海軍がそろって参加することになった。

成熟した準軍事同盟

ディーキン大学のチョンシン・パンは、このような行動はここ数年のクアッドの進化を示し、中国にとっては、それが明確なシグナルとなった、と述べた。

「クアッドは長年にわたって『成熟』し、海上にほぼ焦点を当てた中国に対する軍事準同盟として設計されたものであったことがはっきりしてきたといえるだろう」と、パンは本誌に語った。

「成熟というのは、閣僚レベルで話し合いが行われ、海上の軍事封じ込め(例えば、マラバール海軍演習)をより重視していること、そして意図的に中国を標的としていることをより明確にしている、といった点だ」と彼は言った。

しかし、ほとんどのパートナー国は、中国を標的としていることを認めていない。

「日・豪・印・米の枠組みは、「自由で開かれたインド太平洋:」の促進、質の高いインフラ、海上安全保障、テロ対策などの共通の課題に対処するための具体的な協力を促進するための幅広い議論を行うフォーラムだ」と、日本の外務省は本誌に文書で答えた。「したがって、それは特定の国に焦点を当ててはいない」

「様々な懸念事項」にもかかわらず、この文書では、日本と中国の関係を「日本にとって最も重要な二国間関係の一つ」と表現した。

したがって、この地域における中国の役割は、単に南シナ海のような競争地域に軍隊を派遣し作戦行動を展開することだけではない、とパンは語った。最終的には、オーストラリア、インド、日本をはじめ各国は、中国との関係を個別に交渉しなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ憲法裁、首相の職務停止命じる 失職巡る裁判中

ビジネス

仏ルノー、上期112億ドルの特損計上へ 日産株巡り

ワールド

マスク氏企業への補助金削減、DOGEが検討すべき=

ワールド

インド製造業PMI、6月は14カ月ぶり高水準 輸出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中