最新記事

2020米大統領選

米大統領選、泥沼化で経済にも影響か 混乱の討論会受け政権移行に不安

2020年10月1日(木)10時32分

11月の米大統領選に向けたトランプ大統領とバイデン前副大統領による第1回テレビ討論会が異例の混沌状態となったことを受け、選挙結果の判明が遅れ、政権移行が混迷するとの懸念が投資家の間で広がっている。29日代表撮影(2020年 ロイター)

11月の米大統領選に向けたトランプ大統領とバイデン前副大統領による第1回テレビ討論会が異例の混沌状態となったことを受け、選挙結果の判明が遅れ、政権移行が混迷するとの懸念が投資家の間で広がっている。

トランプ大統領は29日の討論会で、新型コロナウイルス禍を背景に利用が急増するとみられる郵便投票が不正選挙を招くとの持論を改めて主張。「何万もの票が不正に操作されているのを見たら、(選挙結果を)受け入れることはできない」と語り、最高裁が大統領選の結果を判断する可能性もあるとの見方を示した。また、選挙に敗れた場合でも、平和的に政権を移譲することへのコミットメントを示さなかった。

パインブリッジのハニ・レッドハ氏は、討論会を受け「大統領選が泥沼化する可能性が浮き彫りとなった」と指摘。「市場はこの可能性を織り込み、選挙当日とその直後までボラティリティーの高まりが予想されている」と述べた。

投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX、恐怖指数)<.VIX>先物の11、12月限の価格は上昇し、選挙後数週間に市場が乱高下する可能性が織り込まれた。

米株価先物は討論会を受けて、一時1%下落していたものの、米主要株価3指数はこの日軒並み上昇。ペロシ米下院議長とムニューシン米財務長官が、暗礁に乗り上げている新型コロナ経済対策を巡る交渉の打開に期待を示したことが材料視された。

レイモンド・ジェームズの欧州ストラテジスト、クリス・ベイリー氏は「米株先物の討論会前後の動きを比較すれば、市場の懸念は鮮明だ。選挙後の争いが主要懸念となっている」と指摘。アトランティック・キャピタル・マーケッツの取引ディレクター、ジョン・ウールフィット氏も「トランプ大統領は選挙後の闘争に向けた下地を整えた」と述べた。

初回の大統領選討論会は異例の非難合戦となり、トランプ大統領がバイデン氏を「頭が切れるところは何もない」と主張する一方、バイデン氏はトランプ氏を「役に立たない人」「人種差別主義者」「プーチン(ロシア大統領)の子犬」などと呼び、「あなたは史上最悪の大統領だ」とこき下ろした。また、トランプ大統領はバイデン氏の発言にたびたび割り込み、いらだったバイデン氏が「黙ってくれ。全く大統領らしくない振る舞いだ」と非難する場面もあった。

英ブックメーカー(賭け業者)ベットフェアによると、バイデン氏が大統領選で勝利する確率は60%と、討論会前の56%から上昇。トランプ氏の勝率は40%。

一部投資家の間では、バイデン氏の勝利は企業の増税につながる一方、減税や規制緩和を支持するトランプ大統領が再選されれば、株式市場に恩恵をもたらすと同時に、米中間の緊張悪化につながる可能性があるとみられている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 2029年 火星の旅
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月20日号(5月13日発売)は「2029年 火星の旅」特集。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、5月はプラス転換 予想も上回

ビジネス

ホンダ社長、日産との統合協議再開「当分もうない」

ビジネス

世界経済の不確実性、貿易戦争終結でも続く=アイルラ

ワールド

パキスタン、インドの攻撃で約50人死亡と発表 40
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中