最新記事

感染症対策

ヨーロッパの航空業界、搭乗前検査で「陰性オンリー」便に期待 

2020年9月28日(月)13時04分

欧州の航空各社は、妊娠検査薬並みのスピードで新型コロナウイルス感染の有無をチェックできるタイプの抗原検査に、乗客数回復の期待をかけている。直前の検査で陰性と判断された乗客だけに搭乗を認めることで、閉鎖空間での空の旅に安心感を取り戻す狙いだ。写真はマスクを着けた、独ルフトハンザ航空の従業員。6月17日、フランクフルト国際空港で撮影(2020年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

欧州の航空各社は、妊娠検査薬並みのスピードで新型コロナウイルス感染の有無をチェックできるタイプの抗原検査に、乗客数回復の期待をかけている。直前の検査で陰性と判断された乗客だけに搭乗を認めることで、閉鎖空間での空の旅に安心感を取り戻す狙いだ。

政府による救済策を受け入れているドイツのルフトハンザ航空は現在、抗原検査の採用についてスイスの医薬品大手ロシュと協議中で、来月の実現を目指している。関係筋2人が明らかにした。

イタリアのアリタリア航空はロイターに対し、検査で陰性だった乗客のみ搭乗を認める対象に、ミラノ発ローマ行きの2便を23日から追加することを明らかにした。既にローマ発ミラノ行きの2便でこうした措置を適用している。

検査は空港で保健当局者が行い、料金はチケット代に含まれる。アリタリアは、抗原検査の安全性が確認されて人気を得られれば、他の国内便へも適用を拡大し、その後は国際便にも広げたいとしている。

この抗原検査はPCR検査と異なり、機器による処理を必要としない。妊娠検査のように約15分で結果を出すことができる。

ただ、鼻の粘膜を綿棒でぬぐうという不快な作業が必要な上、「偽陰性」が出る確率がPCR検査より高い。

抗原検査キットの種類は増えており、米アボット・ラボラトリーズ、米ベクトン・ディッキンソン&カンパニー、ロシュなどが手がけている。ロシュのキットは、韓国のSDバイオセンサーの製品をリブランド(商標やデザインを変更)している。

欧州では新型コロナ感染者数が再び増えているが、航空各社は各国政府に対し、一律に移動規制をかける代わりに抗原検査の活用を認めるよう迫っている。

国際航空運送協会(IATA)のトップは22日、非医療スタッフが行える迅速な抗原検査が、数週間中に1回7ドルで入手可能になるとの見通しを示した。

陰性オンリー便

抗原検査には欠点もあるが、航空会社は人々に安s心してもらえるバランスを見い出せると期待している。

ロシュの研究開発マネジャー、クリスチャン・ポーラス氏は「特定の検査時点で、陽性、陰性のいずれであるかに信頼性を与えるものだ」と話す。

「PCR検査が最適な基準であるのは、これまでと変わらない。従って、何かしら疑問点が残ったり、抗原検査の結果が陰性でも発熱などの症状が見受けられたりする場合には、確認のための検査を確実に行うようにする」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

不法移民の第三国移送、適切な手続き当面不要 米最高

ワールド

イスラエルのイラン空爆、国際人道法違反も=国連調査

ワールド

訂正-米、イラン核施設攻撃の週末に国民のイスラエル

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、停戦合意を好感 3万90
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中