最新記事

台湾海峡

台湾有事を想定した動画を中国軍が公開

China Shows What Happens 'If War Breaks Out' Amid Taiwan Tensions with U.S.

2020年9月23日(水)18時20分
トム・オコナー

人民解放軍の東部戦域司令部所属部隊がミサイルを発射する場面 EASTERN THEATER COMMAND/CHINESE PEOPLE'S LIBERATION ARMY

<台湾海峡を挟んだ米中の対立が激しさを増すなか、中国軍は「今日、戦争が始まったら中国はどう対応するか」の動画を投稿した>

米中の緊張が高まる台湾海峡でもし戦争が勃発したら、中国はどう戦うのか。中国軍の地域司令部は、緊急事態を想定した宣伝動画を公開した。

ソーシャルメディアサイトの新浪微博(ウエイボー)で動画を公開したのは、人民解放軍(PLA)の東部戦域司令部。冒頭に「もし今日、開戦したら...これがわれわれの答えだ」というタイトルが現れ、背景に流れる軍歌の歌詞が戦闘への準備が完全に整っていることを強調する。想像上の戦場で中国軍の兵士が走り、ミサイルを発射する映像が流れる。

人民解放軍は定期的にその軍事力をオンラインでみせびらかしているが、この最新のメッセージ動画が投稿されたのは、東部と南部の戦域司令部が中国本土と台湾を隔てる海域での演習を強化した、緊張の高まる時期だった。

中国政府は台湾を自国の領土と主張しているが、アメリカは台湾の自治政府に武器や軍装備品を売ったり高官を派遣したりして中国を怒らせた。アメリカと台湾の関係強化の兆しは、中国政府の強い反発を引き起こしている。

経済成長・エネルギー・環境担当のキース・クラッハ米国務次官が17日に台湾を訪れると、中国軍は治安状況の悪化という名目で人民解放軍の空と海の演習を開始した。

「国境」を40回侵犯

国防総省のジョン・サプル報道官は当時本誌に対し、「人民解放軍の攻撃的で不安定な反応は、現在の状態を変え、歴史を書き換えようとする継続的な試みを反映している」と語った。

「台湾や他の近隣諸国に対する強制の道具として軍事力をさらに多用するという中国の姿勢を意思の表れでもある」と、サブルは指摘した。「台湾の安全保障と、台湾人が自国の将来を自己決定する能力を維持することは、アメリカの重要な関心事であり、地域の安全保障にも欠かせない」

だが中国は台湾に対する警告を強化している。伝えられるところでは、中国の軍用機は、台湾海峡上にある中台間の境界線を約40回超えた。これに対し台湾軍は自国のジェット機を緊急発進。台湾国防相は、領土への侵入が認められた場合は「自衛と反撃」の権利があると主張した。

中国政府は台湾海峡における国境の存在を認めない。

中国外務省の汪文斌報道官は北京での記者会見で、「台湾は中国の不可侵の領土の一部であり、海峡を仕切る線はない」と語った。

汪は、中国政府を中国の真の代表と認める40年前からの「一つの中国政策」にアメリカが違反していると非難した。デービッド・スティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、18日の上院外交委員会の公聴会で、アメリカ政府が「一つの中国政策」を維持することを確認したが、アメリカは台湾の安全保障に責任があることも繰り返した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、農村労働者の再教育計画発表 家事サービス分野

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、予想以上に改善 約3年ぶり高水

ビジネス

日産、台湾・鴻海と追浜工場の共同利用を協議 EV生

ワールド

タイ財務相、米に最新の貿易交渉案提出 多くの品目で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 2
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中