最新記事

米暴動

米「内戦」に備える新たな暴力集団ブーガルーとは何者か

At Least 32 Boogaloo Members Present Day of Kenosha Shooting, Loyalist Says

2020年9月2日(水)17時30分
ジョセリン・グジェシュチャク

デモ参加者を守るためと称し、武装して紛れ込むブーガルーと思しき参加者(テキサス州オースティン)Nuri Vallbona‐REUTERS

<全米各地の抗議デモの現場に武装して表れる過激な極右勢力ブーガルー。デモの最中に起きた銃撃事件とも関連が疑われる>

ウィスコンシン州ケノーシャで8月25日深夜、黒人差別反対デモの最中に銃撃があり、2人が死亡する事件が起きた。撃ったのは17歳白人のカイル・リッテンハウスで、殺人容疑で逮捕されたが、動機や背景はまだ明らかになっていない。

だが、極右を中心とする過激な「ブーガルーboogaloo」運動の信奉者ライアン・バルチが、事件当日リッテンハウスと会っていたことをシカゴ・サンタイムズ紙に明かしたところから、全米で悪名を馳せるブーガルーと事件の関連が脚光を浴びている。

バルチはウィスコンシン州ウェストベンドに住む退役陸軍軍人。リッテンハウスはブーガルー運動と「まったく関係ない」とバルチは言ったが、銃撃が起きた日、ケノーシャ市内に32人ものブーガルー信奉者がいたことを明らかにした

ワシントン・ポスト紙の報道によれば、その夜、ブーガルーのバッジを身に着けた男性が数人、目撃されている。

バルチは本誌に、マスコミはブーガルー信奉者を「無関係の群衆」と一緒くたにしている、と文句を言った。

ブーガルーとは何か。ユダヤ系団体の名誉毀損防止連盟(ADL)によれば、もともとは内戦を意味する俗語だが、それを白人至上主義者や極右過激派が、社会転換をもたらすための内戦を表す言葉として使い始めた。

この言葉は同時に「集団暴力を気軽に受け入れる」姿勢を指しており、一部のブーガルー支持者の間では、暴力行為に参加する「意欲の高まり」を意味することもあるという。

人種は関係ない

しかし、サンタイムズあてのメッセージの中でみずから「ブーガルー信奉者」と称したバルチは、極右勢力と、ブーガルー運動の使命には違いがあると語る。

「われわれは、争いが起きないようにしながら、抗議をする人々を必要に応じて助けることができるように、参加しているだけだ」と、本誌へのメッセージでバルチは述べた。

サンタイムズ紙には「ブーガルー信奉者」の間には、内戦が「目前に迫っている」という「一般的なコンセンサス」があると語っていたバルチだが、ブーガルーにとってその戦いは、人種とは関係がないという。

「ブーガルーの少年たちは極端なリバタリアン(自由主義)と無政府主義の理想にこだわる傾向があるので、人種は私たちにとって問題ではない」と、バルチは本誌に語った。「様々な人種や宗教の少年がブーガルーを信奉している」

25日のデモの場に足を運んだブーガルーのメンバー32人はみな、自分と「同じイデオロギーを共有していた」とバルチは言う。極右に共感してブーガルー運動に参加しようとした人々は「権威主義的な理想を支持する傾向がある」。

「(極右のメンバーは)マスコミがブーガルー運動をたたき始めるとすぐに逃げ出して、ブーガルーの名を使わなくなった」と、バルチは語った。

<参考記事>アメリカで台頭する極左アンティファとは何か──増幅し合う極右と極左
<参考記事>孤独なオタクをのみ込む極右旋風

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米AT&T、携帯電話契約者とフリーキャッシュフロー

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中