最新記事

感染症

ブラジル、新型コロナ統計矛盾に疑念深まる 議会から真相究明求める声

2020年6月9日(火)10時12分

ブラジル政府が新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数について矛盾するデータを公表したことから、議会が批判を強め、真相究明のための調査を求める声が出てきた。写真はリオデジャネイロを歩く男性と子ども(2020年 ロイター/Sergio Moraes)

ブラジル政府が新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数について矛盾するデータを公表したことから、議会が批判を強め、真相究明のための調査を求める声が出てきた。感染者数が米国に次ぐ世界第2位に上るとされるだけに、専門家は正確な情報が把握できない状態を懸念している。

問題となったのは保健省が7日明らかにしたデータ。当初の感染者数や死亡者数と、その後インターネットで更新された数字が食い違っていたのだ。同省は8日、2つの州の数字の間違いを修正したことが主な原因で、死亡者は修正後の525人が正しいと説明した。

ただ、政府が累計感染者数の公表を中止した後の出来事だったこともあり、データへの疑念が浮上。議会下院のマイア議長は保健省が実態を隠しているのではないかと指摘し、ツイッターに「統計の信頼性を早急に取り戻す必要がある。ある省庁が現実から目をそらすために数字を操作して、別の世界を創造している」と書き込んだ。

中道政党「市民」に属するガマ上院議員は、上院として数字の信憑性について調査に乗り出すよう促した。

公衆衛生研究所として知られるオズワルド・クルーズ財団傘下の研究機関のトップは、パンデミック(大流行)のこの局面で最新かつ信頼性のあるデータが手に入らないのは「暗闇で車を運転するようなもの」と語り、ワクチンがまだ存在しない以上、情報こそが最大の武器だと警告した。

世界保健機関(WHO)も、ブラジルによる「透明性のある一貫した」情報開示が重要だと強調した。

こうした中、ブラジル政府が8日に発表した新規感染者数は1万5654人、死者は679人だった。

これは、各州保健当局のトップで構成する委員会が先に公表した数字と一致した。同委員会によると、8日時点で累計の感染者数は米国に次ぐ70万7412人、死者は米英に次ぐ3万7134人となった。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染13人 2桁台8日連続
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・3万人死亡のイタリアが欧州で真っ先に国境開放した切実な理由
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200616issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ最高値更新、FRB議長の利下げ示

ワールド

米国防総省の情報局トップ解任、理由は不明=関係筋

ワールド

トランプ氏、輸入家具に対する「大規模な」関税調査実

ワールド

トランプ関税、10年間で財政赤字4兆ドル削減の可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子、ホッキョクグマが取った「まさかの行動」にSNS大爆笑
  • 3
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラドール2匹の深い絆
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    海上ヴィラで撮影中、スマホが夜の海に落下...女性が…
  • 9
    抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り…
  • 10
    【クイズ】格差を示す「ジニ係数」が世界で最も高い…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 9
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中