最新記事

医療

賛否両論のオンライン診療 LINEも参入、医療制度持続への突破口にも

2020年6月18日(木)14時00分

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、時限的に規制が緩和されたオンライン診療の活用が目に見えて広がっている。写真は九段下駅前ココクリニックの石井聡院長。15日撮影(2020年 ロイター/Izumi Nakagawa)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、時限的に規制が緩和されたオンライン診療の活用が目に見えて広がっている。現場の医師や医師会からは、医療の質や診療報酬などの点で、導入に必ずしも積極的ではない声も聞かれる。他方、若手の医療関係者からは、対面診療にオンライン診療という選択肢が加われば、患者の治療継続率向上や医師の働き方の変化につながり、医療制度の持続性という問題解決への突破口になるとの期待も寄せられている。

利用急増でもほど遠い本格普及

東京都千代田区にある「九段下駅前ココクリニック」(内科)では、オンライン診療の台帳に記載された患者が6月半ば時点で600人近くと、コロナ禍が深刻化して以降、利用者が約200人増加した。以前からオンライン診療を利用していた患者に、通院していた既存患者のオンラインへの切り替えも加わった。

コロナ感染防止対策として厚生労働省が4月に入り、初診からの遠隔診療を時限的に認め、再診も規制を緩和したことから、電話を含めた情報通信機器による診療は5月までに利用が増えたようだ。

株式会社MICINによると、2016年に提供を始めたオンライン診療サービスの医療機関との契約数が、昨年12月時点での1700件に対し、直近で約4000件となった。

LINEでは、傘下のLINEヘルスケアが、すでにビデオ通話を活用した医療相談を提供しているが、今後は医療機関との連携を強化し、この夏に新たにオンライン診療に参入する予定だ。

しかし医療機関全体での普及度合いをみると、まだ本格的な広がりにはほど遠い状況だ。

厚生労働省の統計によれば、5月下旬時点で全国で1万4500の医療機関が情報通信機器での診療を導入、うち5割が初診で使用しているという。およそ18万の医療機関総数に比べると、1割に満たない。しかも、実際に画像と音声による遠隔診療は、実はそれほど広く普及しているわけではなさそうだ。

遠隔診療のほとんどが電話診療という調査結果もある。日経メディカルの調査によると、今年に入って汎用テレビ電話や専用のオンライン診療システムを用いた医師は調査対象施設のうち6.7%にすぎず、大方は電話診療か対面診療だった。


【関連記事】
・新型コロナ「勝利宣言」のニュージーランドにも新規感染者
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・米6州で新型コロナ新規感染が記録的増加 オレゴンでは教会で集団感染
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

植田日銀総裁が官邸入り、岸田首相と意見交換=報道

ビジネス

独輸出、3月は予想上回る前月比+0.9% 鉱工業受

ビジネス

任天堂、今期中にスイッチ後継機種を発表へ 営業益は

ビジネス

日本経済強くして円高方向へ是正へ、150円超の円安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中