最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、軍事境界線付近で韓国側に銃撃 偶発事故、あるいは金正恩が軍統制を誇示する狙いか

2020年5月4日(月)10時28分

北朝鮮と韓国の軍事境界線付近で3日朝、両国による銃撃戦が発生した。写真は軍事境界線付近にある韓国側の監視所。2017年8月撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)

北朝鮮と韓国の軍事境界線付近で3日朝、両国による銃撃戦が発生した。北朝鮮を巡っては、健康不安説が流れていた金正恩(キム・ジョンウン)委員長が約3週間ぶりに公の場に姿を見せたと伝えられたばかりだった。

韓国軍合同参謀本部の声明によると、現地時間午前7時41分、北朝鮮から韓国側の警備施設に向けて複数の銃撃があった。韓国は2発を発射して応戦。負傷者は報告されていない。

同日、記者団に状況を説明した参謀本部高官によると、今回の銃撃は農地で発生しており、北朝鮮側の意図的な挑発行為とは思われない、という。同高官は、標的を狙う視野もなく、霧の中で行われた銃撃であり、果たして「明確な挑発と考えられるだろうか」と疑問を呈した。しかし、明確な結論には触れなかった。

韓国シンクタンク、峨山政策研究院の崔剛(チェ・ガン)副院長は、今回の銃撃は挑発かどうかはっきりせず、タイミングを考えると、むしろ金委員長が北朝鮮の軍部を依然として取り仕切っていることを示す目的があったのではないか、と指摘する。

「金氏は昨日、自身が全く健康であることをみせつけようとし、きょうは自身が軍部のコントロールを失ったという憶測をすべて打ち消そうとしていた」と分析。「自分は健康であり、いまだに権力の中心にあることをわれわれにあらためて認識させる狙いがあったのだろう」と語った。

ポンペオ米国務長官は3日、北朝鮮側の銃撃は「偶発的」だった可能性が高いとの見方を示した。

同長官は米ABCの番組で、「われわれは偶発的なものだったとみている。韓国側は撃ち返した。われわれが把握している限り、双方とも死者は出ていない」と述べた。

金委員長が重篤な状況にあるか知っているかについては言及を控えたが、北朝鮮国営メディアが最近の行事での委員長の映像を報じたことを踏まえ、「金委員長は元気なようだ」と述べた。また、金氏はこれまでにも長期間、公の場に姿を現さなかったことがあり、異例なことではないと指摘した。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中