最新記事

日本社会

自殺未遂の割合は20代女性が突出して高い

2020年4月1日(水)13時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

自殺未遂者の統計を見てみると30代までの若年層が全体の半分を占めている ljubaphoto/iStock.

<これまで自殺防止対策は高齢男性に重点が置かれてきたが、近年は子ども・若者の自殺率が上昇(高止まり)傾向にある>

日本の自殺者は1998年から2011年までは年間3万人を超えていたが、近年は減少傾向となり2018年には2万840人まで減っている。2006年に自殺対策基本法が制定され、草の根レベルで自殺防止活動が行われてきたことの成果が出ていると見られる。

自殺というと個人の気質や精神状態の問題と捉えられがちだが、上記の法律は「自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみ捉えられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない」と定めている(第2条)。生活困窮者への支援等、社会的な次元での取組が重要視されている。

自殺には既遂と未遂があり、統計の自殺者は前者に該当する。後者の数を把握するのは難しいが、自損(自傷)行為をして救急車で搬送された人の数が『消防白書』に出ている。<図1>は、年間の自殺者数と自損行為搬送人員の推移をグラフにしたものだ。

data200401-chart01.png

1998年までは近似していたが、翌年から乖離が大きくなる。自殺者の数は横ばいで推移しているが、自損行為搬送人員は増え続けたためだ。2006年には2万人以上の差が出ている。

2010年以降は双方とも減少しているが、未だに開きは大きい。2018年の自殺者は2万840人、自損行為搬送人員は3万5156人。この事実から、既遂者の背後にかなりの未遂者がいると推測される。

過去1年間に自殺を考えた成人の割合は4.5%(厚労省『自殺対策に関する意識調査』2018年)で、これをベース人口にかけたら大変な数になる。自殺未遂者、自殺念慮者......。これらを視野に入れると、日本社会には「いのちの危機」がまん延していると見ていい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 10
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中